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社会・経済・環境 [2024年1月~]

[11月]
  • 驚くほど無策な新聞業界と、報道を捨てたテレビ情報番組に思う…新聞・テレビが「マスメディア」でなくなる日 メディア不信とニュース離れは案外早い時期に訪れるのではないだろうか 2024.11.15(金) 西田 亮介 :日本大学危機管理学部教授、社会学者
    • 最近はTBS系『ラヴィット!』のようにそもそも「ニュースなし」を堂々と掲げる「情報番組」さえ登場している。各事業者が好きにすればよいのだが、いったい誰のために、なんのために放送しているのだろうか。

    • 伝統的なマスメディアは日増しにマス性が自明でなくなるとともに、実質的にパーソナルな媒体になっている。もっともわかりやすいのがかつての代表的マスメディアであったラジオであろう。

    • ラジオ業界の広告費は2010年代半ばピークに減少傾向に歯止めが利かない状況である。取材も限定的になり、制作費も減少し、良くも悪くももっぱらパーソナリティのトークや個性を目当てに視聴する媒体となっている。もはや、ラジオをマスメディアだと認識する人は業界や専門家を除くと、それほど多くはないだろう。

    • 新聞もそうだ。日本新聞協会の調べによれば、2023年にはじめて新聞の1世帯あたり部数が0.5を割り込み0.49となった。1世帯あたり部数がはじめて1を割ったのは、2008年のこと。換言すれば、それまでは平均すると1世帯あたり1部を超えていたということを意味するから、新聞はとんでもなく大きな力を持っていたといえる。

    • 新聞社は名実ともにマスメディアであった2010年代に手を打つべきだったが、英『Financial Times』を買収し、デジタル化を推し進めるなど試行錯誤を続けている日本経済新聞を除くと2010年代は業界全体が驚くほど無策のままに過ぎ去ってしまった。おそらくはこれから10年程度の時間をかけてラジオと同じように、パーソナルなメディアになる途を辿ることが強く懸念される。

    • テレビはどうか。テレビはかろうじて規模で維持しているが、在京キー局、在阪局、在名局くらいまではなんとかやりくりできている。だが、新聞と同じく十年一日で、デジタル化が遅れている。コンテンツ自体を制作していない地方局の未来は暗い。​

 

  • 女性の正規雇用率は上昇している 小前和智 2024年11月12日 リクルートワークス研究所
    • これまでに、多くの女性が結婚や出産を機に退職しその後非正規雇用として再就職していると報告されてきたが、「2020年と2024年の就業率を比較すると、15~24歳と65~74歳では低下しているが、それ以外の幅広い年齢層で上昇が続いている。」は、そうした流れが変わり、数値の変化としても捉えられるようになった可能性を示す。

    • 有配偶の女性の場合、女性自身の勤務先の制度や働き方のみならず、配偶者である男性の働き方も重要な要素となることは、多くの研究で指摘されてきた。家事(household work)を夫婦で分担するとすれば、男性の長時間労働や柔軟でない働き方は女性への家事負担の偏りにつながるためである。

 

 

  • 早慶の合格者、4人に3人が東京圏出身 私大でも受験格差拡大 2024年11月4日 毎日新聞

    • 早稲田大と慶応大の合格者に占める東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の高校出身者の割合が2009~24年度の15年間でいずれも6割強から7割半ばへと増加したことが、毎日新聞の集計で明らかになった。国立の旧帝国7大学で東京圏の合格者数が増えたことが判明しているが、難関私大でも同様に格差が広がっている状況が浮かんだ。

    • いずれも付属・系属校からの内部進学者数については非公開のため、実際の割合はこれより高く、80%近くになるとみられる。

    • 受験の格差を巡っては、北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州の旧7帝大で拡大していることが毎日新聞の集計で判明。08~23年度の15年間で旧7帝大の合格者に占める東京圏の高校出身者は11%から9ポイント増の20%に増えた。

 

[10月]
  • 地球温暖化で「居住不可能な地域」が増加、健康や農業への悪影響が顕在化 2024.10.31 11:00 Forbes JAPAN
    • 地球環境についての国際的な研究プラットフォーム「フューチャー・アース」などがこのほど発表した報告書によると、地球温暖化にともなう気温と湿度の上昇により世界各地で居住不可能な場所が増えている。特に南半球に多い新興国・途上国の一部の地域が極端な暑さと湿度にさらされていると警告している。

    • 報告書の著者の1人であるビョルン・ホールバルド・サムセットは、1970年代以降、地球の平均気温は10年ごとに0.2度上昇しているとインタビューで指摘した。だが、この10年では0.3度上昇しているという。現在、平均気温が29度を超える地域には約6億人が住んでいると考えられている。また、大気汚染が気温の上昇と降雨量の増加に影響し、異常気象につながるという。

    • 気温の上昇は健康や経済、重要なインフラに大きな影響を及ぼす、と言うのはエンジニアリングと持続可能性のコンサルタント会社Arup(アラップ)の自然再興専門家のディマ・ゾゲイブだ。「人間は自然を破壊し、道路をコンクリートで覆い、鉄とガラスで高層ビルを建て、都市部で気温が高くなるヒートアイランド現象を生み出してきた」「こうした行為が周囲に及ぼす影響は不均一で、脆弱な人々はより大きなリスクにさらされる」とゾゲイブは言う。

    • 「都市には、最もリスクの高い人々を保護するために行動を喚起できる、暑さ対策の責任者が必要だ。加えて、CO2排出量の削減を含め、大規模な暑さ対策を講じる必要がある」と指摘している。​

 
  • 全国調査で里山の身近な鳥や蝶が急速に減少 「生物多様性、50年で73%低下」とWWFが危機感 2024.10.29 Science Poetal
    • 環境省と日本自然保護協会は、里山や里地に生息する鳥や蝶(チョウ)など身近な生物の個体数が急速に減少していることを示す報告書「モニタリングサイト1000里地調査」を1日に発表した。長期間にわたる大規模全国調査の一環の結果で、鳥類ではスズメやオナガなどの種が、また蝶類では国蝶のオオムラサキといった以前はなじみ深かった種が、絶滅危惧種認定基準以上の減少率であることが明らかになった。

    • また、世界自然保護基金(WWF)は生物多様性の豊かさを示す指数が、自然環境の損失や気候変動により過去50年で73%低下したとする報告書「生きている地球レポート2024―自然は危機に瀕している」を10日に発表。生態系は回復不可能な状況に近づいているなどと強い危機感を示した。

    • 環境省によると、これら鳥や蝶の種の減少は里山の荒廃が主原因だ。今回の調査ではサンゴの白化や海藻の減少など、気温の上昇などの気候変動の影響とみられる生態系の変化も多く確認された。また外来種の拡大による影響も一部で見られたという。

    • 生息環境別に見ると、森林や山地ではなく、農地や草原、湿地など「開けた環境」(開放的な環境)に生息する種の減少が激しい。これらの場所では里山の荒廃やシカの食害などに加え、稲の害虫駆除に使われる農薬の影響が大きいと考えられるという。

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  • 見たくないものは報道されない 鶴岡秀志(元信州大学先鋭研究所 特任教授) 2024.10.28 世界経済評論IMPACT
    • 株式証券市場関係者とメディアは,生成AIと関連する半導体市場に対してネガティブな情報は完全無視をするらしい。情報を歪めていて健全な産業経済発展に障害となっているのではないか。

    • 現在の生成AIは人間のように想像的に思考することができないということである。もう少し砕けた表現だと,生成AIの応答は役所が奉じる前例主義的なものということである。役所の仕事の合理化には非常に有効なシステムと言える。

    • 生成AIは,あくまでも数式,特に不等式で示される判断基準アルゴリズムを使ってプロトコールを決めている。各生成AIについてプロトコールの詳細は開示されていないが,おそらく,数式の係数(パラメータ)を学習によって調整する自動修正システムを用いていると考えられる。この手順そのものは,フィードバックループなどでかなり昔から使われている手法であり,あくまでも「過去」と「現在」の差分による「学習」に基づく。この方法によって「一対一対応」のRecognitionはできるが,記録されていない様々な事象を「多対多対応」的にCognitionしている人間とはかなり乖離している。

      • CognitionとRecognition は日本語訳ではどちらも認識であるが,前者が心の中で知識と理解が発達する過程であることに対し,後者は存在するものを受け入れることという違いに留意しなければならない。

    • 現在の生成AIは既存の論文や教科書の記述データからごく簡単な「群論」を解くことは可能であるがあくまでも「前例」踏襲である。「群論」を使った想像的発展は前例が存在しないので取り扱えない。

    • 番組制作者の描いたストーリー通りの「絵」を取るだけの媒体になっているTVの姿を見れば,情報を公平,正確に伝える機能は失われていると言って良いだろう。我が国政府が推進する貯蓄から投資への転換で加熱する金融市場の動向は国というシステムの将来を予測するものではなくなっている可能性が高い。失敗を招かないために我が国経済産業を指導する人々は見たくないものをより熱心に見る必要がある。

  • 今こそ言いたい「日本経済を衰退させた真犯人」 選挙で日本経済の未来が議論されない異常事態 野口 悠紀雄 2024/10/27 8:00 東洋経済ONLINE
    • 日本経済に関する最も重要な問題が、総選挙では議論の対象にならなかったということになる。これは今回の選挙の特殊事情ではない。どの選挙においても似たような状況であった。そして、選挙においての問題だけでなく、実際の政策で行われるのが人気取りのバラマキ政策ばかりであり、日本経済を強くするための政策がなおざりにされることの反映である。こうした「政策の貧困」が、日本の経済を衰退させてきたのだ。

    • 1980年代の後半には、日本の1人当たりGDPは、実にアメリカの1.5倍になっていた。これは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時代のことだ。だが、2023年における日本の1人当たりGDPは、アメリカの約7割程度でしかない。

    • 1980年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称された日本が、その後、世界における地位を下げたのは、1980年代、1990年代に生じた大きな世界経済の構造変化による。なかでも重要なのは、中国が工業化に成功したことだ。そして、情報関連技術において、IT革命と呼ばれる大きな変化が生じたことだ。

    • このいずれに対しても、日本は適切に対応することができなかった。それに加えて、政府の政策や企業が対応を誤ったのだ。

    • こうなってしまったのは、円安や金融緩和といった目先の政策に終始して、新しい技術の開発やビジネスモデルの導入、あるいは人材の育成といった問題をなおざりにしたからだ。アベノミクスは、日本の劣化を加速したのだ。新技術の開発や人材の能力向上といった課題は無視し、ひたすら安い金利で資金を利用可能とし、かつ円安を追求した。それに応じて、日本経済が衰退していったのは、必然であった。

  • 新たな消費行動を牽引するZ世代といま起きている3つの大きな変化 ~現代の消費者行動(前編)~ SVPインサイトVol.36 SVD JAPAN 2024/10/24
    • 2024年度の“SVPトレンド調査”では、「現代の消費者行動に関する調査分析」と題して、主要世代の消費行動のトレンドを把握することを目的に、調査分析を行う。

    • ベビーブーム世代、X世代、Y世代、Z世代、さらに、パワーカップル層とニューリッチ層を対象とすることで、世代別と収入階層別の特徴を把握する。本レポートでは、総括として、日本における消費行動の傾向と、いま起きている3つの大きな変化について概観する。

      • 2020年以降は、二人以上の世帯における消費支出は増加している

      • 贅沢消費を抑え、支出のバランスをとる

      • この1年間で、全体の35.0%が低価格商材へのスイッチを実行

      • 商品・サービスの購買決定において、総じて価格重視、ブランド軽視の傾向は顕著

      • 今後の消費意向について、どの世代も半数近くが「節約志向」へ

      • 贅沢消費の対象としては、高齢層は「旅行」と「クルマ」「家電・家具」、若年層は「食料品中心」

 

  • 日本はどんなリスクを取るべきか~デジタル・リアルの勝ち筋 2024年10月21日 ニッセイ基礎研究所
    • 日本は30年ぶりの復活のチャンスを迎えている。ただ不幸なことに経済低迷が長かったため、日本にはそれほど多くの選択肢は残されていない。

    • その上で、筆者は国産の半導体はなんとしても手に入れるべきだと思っている。日本復活の肝は、日本で生産して貿易黒字を作りだし、日本に雇用と利益を還元することだと思っている。少なくとも、デジタル・リアルの世界を作り出し、日本の製造業を復権させることが不可欠であり、その重要なパーツが「半導体」である。

    • 日本には、追い風が2つ吹いている。その1つは、価値判断基準の変化だ。日本は「成長センター」となる潜在能力を秘めるASEAN(東南アジア諸国連合)からの信頼が高い。経済安保が世界の趨勢となる中、信頼性の高さが製品購入時の重要な判断基準になり始めている。信頼性が高く、高品質な日本の製品にとって、この変化は大きなプラスである。

    • もう1つは、デジタルとリアルの融合の流れだ。日本はデジタル化で、米国や中国から大きく引き離されて来た。しかし、これからはリアルな製造の現場に、デジタルが組み込まれるシーンが増えて行く。身の回りにある、あらゆる製造物がIOTでネットに接続し、リアルタイムで収集されたデータがAIに分析され、経験や想像で補われていた部分がデジタルで管理されるようになる。それは製造物だけでなく、サービスや商習慣もデジタル化していく。

    • 世界を見回した時、製造業をフルラインナップで有している国は、日本のほかにあまりない。日本の高いサービス品質と日本式の安心安全の作り方・社会体制は、デジタル・リアルの世界においても大いに生きる。これまで完全デジタルの世界では完敗してきた日本も、リアルと接続するデジタル・リアルの世界では復活できる。

    • これを実現するのに不可欠なのがエネルギーだ。電気のないところにデジタル化は起きない。一つの社会的選択として作れる電力量に経済水準を落とすこともあり得る。しかし、その選択をしないなら、原発の再稼働やリプレース、再生エネのさらなる拡大などの選択を今すぐ実行しないと近未来の需要に間に合わない。

    • 企業は生産性(付加価値/投入量)を上げることが至上命題である。デフレ下では分母のコスト・カットが優先されたが、インフレ下では付加価値創出をしない限り、生産性の向上は実現できない。そのためには、新たなアイデア等を生み出す人への投資、賃上げなどの処遇改善、新しい製品の開発、製造するための設備投資が必要になる。新しく生み出されたものが消費者に受ければ、売上高でみる生産性は伸ばすことができる。

    • 国も企業も個人も「やらないリスク」をもっと意識し、選択することを先送りしないことである。

    • 参考:財政制度分科会(令和6年11月1日開催)資料一覧 財務省
      • 資料1  国内投資・中小企業等

      • 資料2  外交・デジタル

      • 参考資料 国内投資・中小企業等(参考資料)

  • スタートアップは経済成長に寄与しているのか 「GAFAMを日本から生み出す」という幻想を捨てよ 加藤雅俊 関西学院大学経済学部教授 2024/10/16 10:00 東洋経済ONLINE
    • MicrosoftやAppleは、創業からすでに50年ほど経過しているし、GoogleやAmazonは30年、Facebookも20年ほど経過している。つまり、近年のGAFAMの成長は、大企業がさらなる拡大を遂げたにすぎないのである。何よりこれは長年繰り広げられた「競争」の結果であり、アメリカ政府が作り上げたものでも何でもない。

    • スタートアップが生み出す経済効果についても、明確に効果があるとは首肯しがたい部分もある。

    • 筆者のスタートアップ研究から得た教訓は2つ。

      • 1つ目は、スタートアップが経済活性化における「起爆剤」となる可能性は低いということ。そもそも、アメリカ以外の国はGAFAMを出せていない。

      • 2つ目は、スタートアップの成長に「特効薬」はないということ。成長はランダムで「運」の要素が強いことはおおよそわかっており、「こうすれば、成長できる」という単純な図式はない。

    • スタートアップに期待されている役割は何なのか。それは、市場に「新たに競争をもたらす」ということである。競争はイノベーションを生み出す源泉である。つまり、スタートアップ自身が生き残るためにイノベーションを起こす可能性があるし、既存のプレイヤーもスタートアップからの競争のプレッシャーによって、新たなイノベーションを生み出すことが期待されている。ただし、スタートアップは競争をもたらすだけでなく、大企業にとってはイノベーションにおける「分業」のパートナーにもなりうるのだ。この意味では、両者は補完的な関係にあるとも言えるだろう。そうした相互作用を起こすことも期待されているということだ。

    • スタートアップ支援を考えるうえで大事なことは、新しく市場に参入する企業への入り口を整えるだけではなく、市場から退出する企業の出口(倒産/廃業/M&Aなど)も整えることである。新しい企業が出てこないのは、市場から退出する企業が少ないから、人も金も技術も市場に流れてこない側面もある。競争というファクターがより作用する環境を整えるのである。

    • その視点で考えると、政府がスタートアップに対して創業から5年、10年手取り足取り支援を続ける必要はない。公的支援は、あくまで創業間もない段階での成長への「足掛かり」となるような支援にとどめ、その後はフェアな競争にさらす必要がある。

    • 起業活動は起業家「個人」だけで生まれるものではなく、起業に対する社会的規範や制度によるところも大きい。そうした社会的規範は、短期で変わるものでもないので、たとえ「5カ年計画」だとしてもすぐに明確な効果が出ることを期待してはいけない。​

 
  • 〈中国「認知戦」の正体に迫る〉流出文書を追った調査報道、ネット空間はすでに戦時にある 田部康喜( コラムニスト) 2024年10月12日
    • 中国が習近平主席のもとで2013年に「情報戦に向けた準備」を呼びかけた。その後、中国国内のサイバーセキュリティ企業は、最近まで約4000社まで増加して、警察組織の一部ともいえる治安対策を専門とする「公安」や、「軍」と共同で「認知戦」を仕かけている。

    • 認知戦とは、対象国のなかの分断の亀裂が入っているテーマについて、SNSなどを使って分断を大きくする活動である。そのかたわらで、対象国の国民に中国との関係を深めるように誘導する。

    • いまの西側諸国と中国との根本には、価値観やイデオロギーの隔たりがあります。そこで『認知戦』が重要になるのです。現在を正確に理解するなら、戦争はすでに始まっていて、ただ目の前でミサイルが発射されていないだけなのです」と。現在のサイバー空間では、平時と戦争の区別がありません。

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  • 移民と日本社会 データで読み解く実態と将来像 永吉希久子(東京大学) 財務総合政策研究所ランチミーティング(2024.10.03)
    • ここでは短期滞在者を除き、外国籍者すべてを「移民」と呼ぶ

    • 他国の結果によれば移民の受け入れはおおむね肯定的な経済効果をもつ

      •  競合関係にある労働者の労働環境の悪化は、最低賃金を高めることで緩和可能

      •  低技能移民の受け入れによる技術発展の抑制は起こりえる

      •  高技能移民の増加による産業発展

      •  ただし、経済効果は限定的であることに注意が必要

    • 日本ではメリットはより小さく、長期的にはデメリットが生じる可能性も

      • 労働力人口を補うという点ではプラスの効果

      • 低技能労働者のキャリア上昇のチャンスの少なさと高齢期の経済リスク

        • 状況は身分系の在留資格を持つ人の方が深刻か

        • 親世代の経済不安定が子ども世代に影響

    •  高技能労働者の能力を生かせておらず、定住も抑制されている

[9月]
  • 再考:日本の生産性 学習院大学経済学部 教授 滝澤美帆 月刊資本市場 2024.9(No. 469) (公財)資本市場研究会
    • 日本の労働生産性水準は、製造業で米国の 7 割程度、サービス業で 5 割程度であることがわかった。
    • 本稿では、人口減少が進む中で経済成長をもたらすための数少ないチャンネルとして、設備投資や人的資本投資に注目をした。
      • 新しいテクノロジーを体化した機械や設備へ投資して資本装備率を上げること、そして、人的資本投資を増やすことが重要である。
      • 特に、企業数では99.7%、雇用の7 割を占める中小企業の生産性を伸ばすことが、経済全体の生産性向上のためには必須となる。
 
  • 米国で年収1400万円以上を稼ぐ「5つの技術職」 2024.09.25 09:00 Forbes JAPAN
    • 1. バックエンドソフトウェアエンジニア 総報酬の中央値:18万ドル(約2563万円)

    • 2. AIリサーチャー 総報酬の中央値:18万ドル(約2563万円)

    • 3. ネットワークエンジニア 総報酬の中央値:20万1000ドル(約2862万円)

    • 4. クオンツリサーチャー 総報酬の中央値:20万2300ドル(約2877万円)

    • 5. テクニカル・プロダクト・マネージャー 総報酬の中央値:24万3000ドル(約3457万円)

 
  • 都市部の緑地、平均-3℃の効果 冷却能力が高い都市は10位まで全部アメリカ クラウディア・カルアナ(SciDev.Netライター)2024年09月25日 事業構想 ※『SciDev.Net』に2024年9月5日付で掲載された記事
    • 研究者たちは、世界の500都市の衛星データを使用して、都市内の緑地が都市の表面温度をどの程度冷却しているかを評価した。新たな研究により、低・中所得国の多くの都市が、気候変動とは別の要因で猛暑にさらされていることが明らかになった。その要因とは、冷却効果をもつ緑地の不足だ。

    • 英エクセター大学の気候変動専門家であるティム・レントン氏は、緑地や屋上庭園、樹木などの都市緑化は「致命的な影響をもたらす猛暑と湿度への対策として非常に効果的」だと指摘する。「現在、気候変動によって命を落としているのは、多くが都市のスラム街に住む人々です」同氏は言う。

    • 都市の緑地は、暖かい季節には平均で都市の表面温度を約3°C冷却できることが分析により示されており、「猛暑の際には、非常に重要な差となる」とレントン氏は強調する。都市の緑地、特に都市内の森林の冷却効果は、日陰を作ることと水の蒸発によるものだという。

    • ノースカロライナ州立大学の著名な生態学者であるロブ・ダン氏は、「都市の緑化は簡単ではないが、都市を将来的に住みやすくするための鍵だ」と指摘する。

      彼は都市を猛暑から守るために、地上の緑地のほか、壁面緑化、屋上緑化、さらには都市の森を導入することを提案している。

  • 深化するSX 第1回:Scope3およびサーキュラーエコノミーへの挑戦 2024-09-17 pwc
    • ​2024年1月に開催された世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)では「気候、自然、エネルギーの長期戦略」についてのパネルディスカッションが行われ、複雑化するサステナビリティ課題への対応策として、「システミック投資」が注目されました。

    • 「システミック投資」とは、バリューチェーンの構造と変革メカニズムを「システム」として解明し、変革の要所に対して投資・開発活動を行うことで、単一で行う投資より遥かに大きな変化を生み出す手法です。

    • PwCでは、サーキュラーエコノミーを「自然界からの採取と拡散を最小化し、物質を循環させることで、サステナビリティ課題の解決と経済の両立をはかるもの」と定義しています。人間の経済活動は、自然の均衡を壊す形で大量の資源採取や大量廃棄、CO2の拡散をもたらしています。これにより、資源の枯渇や、生態系の破壊、気候変動、環境汚染が引き起こされます。このような問題の根源となる採取と拡散を極小化するため、経済活動を循環構造に変えていく。それがサーキュラーエコノミーです。

    • 局所から広域へとサーキュラーエコノミーを拡大させるためには、以下の4つの要諦を押さえる必要があります。

    • 1つ目はイノベーション。マテリアル、バイオサイエンスやエンジニアリング技術の革新により、根本的な課題解決とコスト低減に向けた、具体的な打ち手を用意します。2つ目はサプライチェーンの組み直し。循環化に伴う新たな多様なステークホルダーを巻き込み、各々の役割と目的をデザインする必要があります。3つ目はビジネスモデル。先に述べたようにマネタイズに向けた多様な工夫が必要です。4つ目はスケール化。法制度や消費者意識に目が行きがちですが、どちらも欧米に遅れている現状を踏まえると、それらへの過度な依存は避けるべきです。むしろ、自ら成功例を作り、業界を動かすフロンティアランナーとしての動きが望まれます。

​【8月】
  • 国家ブランド指数No.1の日本 海外に評価される、知られざる本当の強み 2024.08.31 10:15 Forbes JAPAN
    • 経産省のクールジャパン政策課と協働し、『海外都市から見た日本ブランドの今と今後の可能性』をテーマに調査を実施したBIOTOPE代表の佐宗邦威へのインタビュー記事

    • 国家ブランド指数1位 海外から見た日本、知られざる4つの価値

      • ソフトパワーの点で見た時には、すごく価値が上がってるという実態があるのですが、その部分がほとんど知られていないっていう現状がとてもよくない

    • 日本の強みの活かし方

      • 日本人の精神性や、生活スタイルを背景にした多様な文化コンテンツと段階的に出会うことでポジティブイメージが形成され、最終的に4つの提供価値になる。

        ①バラエティ豊かで遊び心のある体験 ②心が落ち着く体験 ③健康な暮らし ④丁寧な暮らし

    • 表面的に幅が広いけど、実はものすごく奥深いブランドだ、というところが強み

      今後、国策として文化戦略を考える上でも、2週間以上滞在する人を増やしていく、というのはファンを作っていく上で1つ大きな分岐点なのかなと思います。

    • 失われた30年のなかで、日本のガラパゴス化が進んだという視点はすごく自虐的だし、ドライなことが多かったと思うんです。しかし、むしろ日本の文化として自分の足元に眠っているものは、実は世界から見るとすごくユニークな存在として認識されていて、幅広く、かつ奥深いというのは、大きな価値だと思うんです。

    • ブランド論の観点から見ると、他の国はすぐには真似できないものが詰まったブランドとして強いはずなんです。文化の領域は模倣がすごく難しいので、ちゃんと自分たちの強みにしていけば、次の20年、30年ちゃんと残っていき、自分たちを助けてくれる資産になるはずなんじゃないかなと思っています。無形資産──目に見えない価値をちゃんと守っていくための事業を今後提唱していけると、これは次の世代にも残っていく文化資産になるんじゃないでしょうか。

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  • 1.42倍に価格高騰しても輸入数量が減らない! ~円安下で生じている構造変化~ 2024.08.29 第一生命経済研究所
    • ​2020年以降、GDPデフレーターでの輸入物価の変化は、実に1.42倍の上昇である。通常、輸入物価が上がると、輸入品から国産品へのシフトが起こり、それが物価上昇圧力を緩和する。ところが、2020年以降、実質輸入は9.2%も増加している。割高になっても、輸入数量は増え続けている。輸出数量の増加も限定的である。円安メリットは、一体どこに行ったのかといぶかしく思う。調べてみると、そこにはデジタルなど先端分野で日本の製品競争力が低下している姿が浮き上がってきた。

    • コロナ禍でデジタル需要が急増した。クラウドの利用拡大は、海外事業者に「通信・コンピュータ・情報サービス」利用の対価を支払うことになった。「その他業務サービス」の方も、インターネット広告やOS分野の使用料とである。米国などのプラットフォーマーに支払うサービス代金の支払いが急増したのは、2020年以降のデジタル需要の高まりがある。

    • 消費財、生産財でも同様に輸入浸透度が上がっている。つまり、サービスだけではなく、財の品目でも日本企業の競争力が相対的に低下していることを示唆している。

  • 「あえて結婚しない女性」が増えた真の理由、実は「仕事や趣味」のせいではなく…【識者が解説】 2024.8.27 4:00 DIAMOND online
    • 家族社会学者の山田昌弘氏へのインタビュー記事。

    • 1990年と2020年の国勢調査における未婚率を比較してみると、25歳~29歳の女性の未婚率は40%から65%、30歳~34歳の女性の未婚率は14%から39%と、大幅に上昇している。(総務省統計局「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」

    • 山田氏は、結婚したくない人が増えたというよりも、結婚に適した相手に出会いにくい社会になったことで、結果的に結婚しない選択肢を取る女性が増えていると話す。

    • 今の時代は、マッチングアプリなどで出会いの機会は豊富になったことに伴い、比較対象も増えています。その結果、次はもっといい人に出会えるかもしれないと思う人が増え、それにより『妥協してまで結婚したくない』という女性が増えたのだと思います」
    • 「国が助成金などを充実させて、お金のことを気にせずに相手を選べる環境になれば結婚しやすい社会になると思います。結婚のメリットは、主に老後の孤独に対処するということですから、独身でも友達や仕事に恵まれていれば、必ずしも結婚する必要はありません。

    • 若いときには独身で自由な生活を謳歌し、老後に訪れる不安を解消することを考えれば、自然と行き着くのは、結婚適齢期ではなく、50歳など老後を見据えた年齢での結婚だ。

  • 「自然資本」を経済指標中心に考えることの難しさ ―自然との共生(日本的な豊かさ)を感じられる世界に向けて― 2024/08 三井物産戦略研究所
    • ​2024年の選挙イヤーに、即効的経済政策を望む有権者がグリーン政策を継続支持するか注目される。

    • グリーン政策の計測指標としての自然資本は、経済思想(西欧近代的思考)の影響下にある。

    • 日本的な豊かさの下で感じられる自然資本は、人間と自然の共生の中で培われている。

    • 自然資本という言葉を、現代合理主義の下で再解釈し、自然との共生を目指してはどうか。枠組みを3つ提言する

      • 自然の成長速度に合わせ、異なる時間軸を併用 

      • デジタル情報を組み合わせた自然空間の高度利用

      • 都市に自然を創出する形で社会インフラを整備 

    • サリバン教授が語る「自然資本は、会計士が作り出す魔術ではない」という主張は、近代的思想から抜け切れていない現代人への慈雨であり、地球に響く言葉である。人間が自然を支配するという指標運用ではなく、人間と自然が一緒に成長するという視点に立つことで、自然との共存の豊かさを確信することができるように思える。

 

  • 温暖化で増加する熱波による世界各地での被害 ~ 熱波に関連する事業リスク 2024/8/20 東京海上ディーアール㈱
    • ​熱波とは、通常予想される気温よりも異常に高い気温が長期間続くことであり、数日から数週間に亘ることがあります。

    • 熱波は最も致命的な自然災害の一つで、毎年何千人もの人々が熱に関連した原因で亡くなっています。しかし、熱波の影響の全容は、死亡証明書が集められるか、科学者が超過死亡を分析できるまで、数週間または数か月後にしかわかりません。また、多くの場所では、熱に関連した死亡の記録が適切に保管されていないため、現在入手可能な熱波による世界の死亡者数は過小評価されている可能性があります。

    • 熱波による事業影響を評価する際は、前述した日最高気温という気温に関する情報に加え、湿度に関する情報が重要になります。

  • グリーン成長、脱成長、グリーンニューディール 排出量ネットゼロ達成に有望なのは リチャード・サンドブルック(トロント大学 政治学 名誉教授)2024年08月20日 事業構想
    • ​ネットゼロを達成するためのアプローチは大きく分けて3つある。急進的改革主義(グリーンニューディール)、グリーン成長(現在の戦略)、そして「脱成長(Degrowth)」と呼ばれる考え方だ。

    • グリーン成長は気候・生態学的な課題に対応できていない。地球環境が安定した状態を保てる限界の範囲である9つのプラネタリーバウンダリーのうち人類は既に6つを超えており、2015年のパリ気候協定で提案された1.5℃の温暖化制限に間に合わない。今すぐ決断して行動を起こす必要がある。

    • 脱成長とは、GDPを廃止し、人間のニーズを満たすことを経済目標に置く革命的なアイデアである。脱成長は政治的・経済的に実現可能ではない。脱成長は資本主義を問題として捉え、それを「ポスト資本主義」や「ポスト成長」へと転換することを求めている。最大の問題は、そこにどうやって到達するかである。

    • カナダでは、2016年のリープマニフェストでグリーンニューディールの概念と政策構造が打ち出された。これには再生可能エネルギー、富の分配、先住民の権利、支援的な社会運動の構築が焦点とされている。しかし、マニフェストの野心的な目標は未だ実現しておらず、カナダには正式なグリーンニューディールが存在しない。

      • カナダにおける急進的なグリーンニューディールの必要性は説得力があり明白である。グリーンニューディールは、グリーン成長よりもポジティブな生態系変化をもたらす可能性があり、脱成長モデルよりも短期的には実現可能である。ニューディールはアメリカを大恐慌から救ったが、グリーンニューディールは私たち全員を生態学的崩壊から救う第一歩となるだろう。

    • 主流のグリーン成長アプローチは私たちを救うことはできない。そして、脱成長のビジョンは魅力的ではあるが、資本主義を覆すという非現実的なものを伴う。急進的改革主義のグリーンニューディールは、気候的緊急事態に対してグリーン成長よりも実行可能なアプローチであり、脱成長よりも政治的に実現可能性がある。

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  • 「10年以内に火星に人類を送り込み、20年後には火星都市が実現する」 イーロン・マスクが率いるスペースXが描く「火星都市」の最新計画図 2024.8.12 

    • 2016年には火星に自律的な文明を築くには40年から100年かかると述べていたマスクだが、2024年4月、スペースXの従業員に向けて「およそ20年後には100万人が火星に移住するだろう」と語りかけた。「生命の“多惑星化”は急務だ」と、マスクは公開動画のなかで語っている。「文明に余力のある今のうちに実行に移さねばならない」

    • 構想は、彼が地球上で手がけるほぼすべての事業の原動力となっている。資料と関係者の証言によると、マスクの火星に対するビジョンは、彼が経営あるいは所有する6つの会社の根底にあり、いずれの会社も地球外コロニーの建設に貢献する可能性を秘めているという。

    • マスクが設立した私営トンネル掘削ベンチャーのボーリング社は、火星の地表を掘削するための機器開発を目的の一つとして設立されたと、2人の関係者は明かす。マスクはSNSの「X」を買収した理由の一つとして、合意に基づいて統治される市民主導型の政府が火星上で機能するかテストするためだと語っている。

    • さらに、EV会社テスラの鋼鉄パネル製サイバートラックは、火星の住民が乗ることを想定しているとも語っている。約2700億ドル(約40兆円)の資産を保有するマスクは、テスラから得た約470億ドル(約7兆円)の報酬パッケージを含む自身の蓄積資産は、すべて火星移住計画の資金だと公言している。

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【7月】
  • 長寿な都市が人々に“促す”こと 人々を長生きさせる「都市の特徴」とは? スペインに学ぶ健康的な都市計画 2024.7.21 COURRiER
    • 英誌「エコノミスト」は、現在の世界最高齢者を擁するスペインに注目。スペインの都市には、「いまの楽しさ」と「長期的な満足度」を両立させる要素があるという。

      • 現時点の世界最高齢者は、マリア・ブラニャス・モレラ(117)というスペイン人女性であり、彼女の前はフランス人女性だった。

    • 徒歩での移動だ。2017年のある研究によると、スペイン人の一日当たりの平均歩数は5936歩で、西ヨーロッパのそれを上回っている(イタリア、フランス、ポルトガルはスペインほどではない)。

    • 誰もが適度に歩いているスペインのような国は、肥満率が低かった。これが肥満関連の疾病による死亡者数の減少につながっているのは明らかだ。

    • スペイン人がよく歩く理由は何か。スペインの都市は、小さな町でもそうなのだが、人口が密集している。都市や町の境界まで来ると、そこから先は人気(ひとけ)のない田舎であることも珍しくない。

    • スペイン人が徒歩で行動する習慣は、社会生活にも役立っている。スペインの都市は広場を囲むようにして作られており、この広場が、友人、家族、同僚と腰を下ろして飲食をし、話をする場になっている。たとえお昼からベルモットとポテトチップスを口にしながらだとしても、この社交習慣が健康に良い。数多くの研究から、社会的接触が心身のウェルビーイングに重要であることが判明している。

    • ヨーロッパレベルの豊かさ(幸福の予測変数のトップに位置するもの)とヘルスケア(健康を維持するもの)を備え、かつラテンアメリカの文化的特色、つまりいまを生き、友人や家族を大事にする性向をも持ち合わせているのがスペインだ。これらは、それ自体が良いというだけではない。人をがんばろうという気持ちにさせてくれるものでもあるのだ。

 
  • 「気温50度」のシナリオも、熱波に備えた都市設計の必要性を専門家が警告 2024.07.20 11:00 Forbes JAPAN
    • 国連人間居住計画と大西洋評議会のアドリアン・アーシュト/ロックフェラー財団レジリエンスセンターの「最高熱波責任者」であるエレニ・ミリビリはインタビューで、都市部は他の地域の平均の2倍の速さで暑くなっており、「地球温暖化の中心点」になっていると語った。

    • ミリビリは、都市計画に携わる人は現在世界中で記録が塗り替えられている気温だけでなく、さらに暑くなる可能性のある来るべき熱波に備えた都市設計を始める必要があるとも指摘した。

    • 調査で英ロンドンの最も暑い地域の気温は、近隣の緑豊かな地域よりも8度も高いことがわかったとゾゲイブは明らかにした。

    • 同社の研究者がアラブ首長国連邦で調査したところ、日差しを遮る覆いや樹木、透水性の表面などの対策を導入した地区の気温は10度も下がることがわかった。

    • 「この研究は、遮光や緑化、オープンスペース、樹木が都市の気温を下げるのに大きく貢献することを如実に示している」とゾゲイブは筆者に語った。

    • ミリビリはまた、多くの都市に「自然がない」ことも、都市の気温上昇を助長していると指摘し、医学誌ランセットに2023年に掲載された研究にも言及した。この研究では、欧州の都市で樹木被覆率を30%まで高めることで、暑さに関連する死を3分の1減らすことができると論じた。

 
  • ここが知りたい『国連未来サミットでSDGsの次の目標としてウェルビーイングがテーマの一つに』 2024.07.18 第一生命経済研究所
    • 国連未来サミット(Summit of the Future)は、2024年9月に開催予定の国連の重要なイベントである。このサミットでは、2045年の国連100周年に向けて、世界が直面する重大な課題に対する協力の強化とSDGsの次のグローバル・アジェンダを議論することを目的としている。

    • 国連未来サミットでは、SDGsの次のグローバル・アジェンダのキーとなる枠組みとして"Beyond GDP"(GDPを超えて)を議論しようと提唱されている。

    • Beyond GDP枠組みは大きく目指すべき「アウトカム」(成果)と、その実現のための持続的な変化の原動力となる「プロセス」の二つで構成される。

    • 3つのアウトカム:包摂的(誰一人取り残さない)で持続可能な社会の実現に向けた重要な要素

       ①ウェルビーイングと主体性

       ②生命と地球の尊重

       ③ 不平等の縮小と連帯の拡大

    • 3つのプロセス

       ①参加型ガバナンスとより強固な制度

       ②革新的で倫理的な経済

       ③脆弱性からレジリエンスへ

    • 東アジア的な価値観(例えば京大の内田教授が提唱する協調的幸福感尺度のような概念)をBeyond GDP枠組みに反映させていくことは国民が納得感をもって自らのウェルビーイング向上を図る意味でも重要と考えられる。

  • ついに「農協崩壊」がはじまった…農林中金「1兆5000億円の巨大赤字」報道が示す"JAと農業"の歪んだ関係 農協マネーを外国債投資で溶かした根本原因 2024.07.12 プレジデントオンライン(2024年7月3日付)に掲載 キャノングローバル戦略研究所
    • JAバンクの中央機関、農林中金は、5月22日の記者会見で、米金利高止まりによる外債価格下落で、2025年3月の赤字が5000億円となる見込みとなり、傘下のJA農協から1兆2000億円の資本増強を受けると公表した。ところが、6月18日、報道各社がその最終赤字は1兆5000億円規模に拡大する可能性があると相次いで報じた。

    • 08年のリーマンショックの際にもサブプライムローン問題で5700億円の赤字を計上し1兆9000億円の資本増強を行っている。

    • 現在JAバンクの預金量は109兆円に上る。JAバンクの貯貸率(預金に対する貸し出しの比率)は3割程度。60兆円超の運用を任せられる農林中金は、日本有数の機関投資家として海外有価証券市場で大きな利益を上げ、預金集めの見返りとして傘下のJAに毎年3000億円の利益を還元してきた。JAが簡単に資本増強に応じるのも、今までの受益の蓄積があるからだ。

    • 逆に、JAに利益を還元するためには、国内ではなく収益の高い海外で運用するしかなかった。しかし、今回の赤字計上で、今まで通りの資産運用はできなくなっている。

    • 21年JAの収益は、信用(銀行)事業で2425億円、共済(保険)事業で1160億円の黒字、これに対して、農業関連事業は226億円、生活その他事業は229億円、営農指導事業は978億円の赤字である。金融事業からの補てんで、農業等の事業を行っているのだ。

    • キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「農林中金は全国の農協が集めた60兆円超の資金を預かり、毎年3000億円ほどの運用益を還元している。これらが縮小・消滅していくと、農協は倒産・崩壊の危機に直面することになる」という。

    • 非効率な零細農家は離農し、その農地は専業農家に集約されて生産性が向上する。本来農業振興のための組織だったJA農協の弱体化が、農業の再生につながるとは皮肉な話である。

 
  • 2024年の生成AIの展望――生成AIは“試用”から“活用”へ 2024/07/08 NRI
    • ChatGPTは単なるチャット用途だけではなく、導入すれば最新の生成AI機能を容易に活用できる「生成AIパッケージ」へと進化している。

    • 状況を理解し、最適な行動をする「AIエージェント」が普及。

    • 複数種類のデータを同時に処理するマルチモーダル化は、2024年以降さらに進むと考えられます。

    • データサイエンティストの世界的コンペティションにおいて、優秀な成績を収めている日本人が多くいることからも、日本は生成AIを浸透・発展させるポテンシャルは高い

  • 公共交通のリ・デザインとわが国経済の持続可能性 ~次の100年について考える July 2024 KPMG
    • コロナ禍を経て、今後続く急激な人口減少社会に向き合うにあたり、新たな価値創造モデルを検討すべき時期に来ているのではないだろうか。

    • アフターコロナの公共交通

      • 2020年に世界中を襲った新型コロナウイルスは、わが国の公共交通に深刻なダメージを与えた。一定程度の回復を迎えた今、更なる飛躍に向けた抜本的な変革が必要ではないだろうか。

    • サステナビリティ経営の浸透と日本の公共交通

      • 日本の資本主義の父、渋沢 栄一の思想を引続き、社会性と事業性の同時追求により、主に民間の事業推進力によって支えてられてきた鉄道を始めたとした日本の公共交通。世界に誇るべき素晴らしいモデルである一方、地方部では存続可能性の危機に瀕している。

    • 公共交通の持続性担保のために

      • 地域交通の持続性は、単に交通事業者だけでなく、日本という国土の持続可能性を考えるうえでも重要な意味を持っている。データ利活用により �移動がもたらす価値 �をあらためて考え直し、新たな価値創造のための日本流の合意形成を図る必要があると考える。

 
  • SDGsからSWGsへ ~“健康” という不文律を読み解く~(「国連SDGsとパックス・ジャポニカ」Vol. 8) 2024.07.02 原田武夫国際戦略情報研究所
    • “健康”という概念自体、現代では当たり前のように使われているが、多くの先行研究が重ねられ、様々なアプローチが健康を測る上でなされてきた。代表的な研究者はエミール・デュエルケームだろう[Berkman, 00]。デュエルケームは社会的病理と社会動態の相関を示し学問を発展させた。その後、1950年代の英国人文学者によりソーシャル・ネットワーク理論として社会構造の中でより健康状態が論究され、1980年代に向けて社会的なつながりが“健康”を測るために発展的な研究が重ねられている。

    • WHO憲章では、前文において「健康」を次のように定義している。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。」ここで留意すべき点は、上記の学術的系譜に基づき、単なる身体の状態による健康ではなく、社会的に健康状態に繋がるアクセス権について述べている点である。その根底にあるのが「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」と言う考え方。

      • 物理的アクセス・経済的アクセス・社会慣習的アクセス

    • こうした健康状態を測る上で、現代ではよく知られている「well-being(ウェルビーイング)」がある。個人が社会的なアクセスを得た上で「 well(良い)+being(状態)」でいられることが現代における健康状態であるということができよう。

    • 2030年までの目標であるSDGsを超えてその先の目標枠組みにおける議論が益々活発である。注目すべきは次の国際共通の目標をウェルビーイングにする動きがあることだ。

    • SDGs後の世界共通目標を議論する際には、人々にとっての「成長」概念を問い直す必要がある。

 
  • 失われつつある「コモン」とは何なのか。斎藤幸平さんと神宮外苑から考える 「何かがおかしい」と気づかせる神宮外苑再開発。あらゆる人が生きていくのに必要なコモンを守るために、私たちは何ができるのでしょうか 安田 聡子 2024年07月01日 HUFFPOST
    • 自著「コモンの『自治』論」(集英社)で、問題解決の鍵を「自治」とした斎藤さんに、神宮外苑再開発の視点からコモン再生と育成への道を聞いた。

    • 私がコモンと呼んでいるのは「市場に任せてはいけない、社会で共有すべき富」のことです。 具体的には、水や医療、教育、公園などの公共空間など、あらゆる人が生きていくために必要なものが含まれます。

    • つまり、人権に限りなく近いような公共財としての社会的インフラですね。それを商品化するようになれば、お金をもっている人だけしかアクセスできなくなる。

    • 世界全体でも、新自由主義の名の下でコモンが商品化され、その結果、医療や公共交通機関へのアクセスなどで格差が広がってしまっています。そしてそのことが、トランプやルペンなどの極右の台頭をもたらしているわけです。

    • 神宮外苑の再開発はわかりやすい「コモンの商品化」だと思います。厳しい建物の高さ制限のあった外苑地区で規制緩和が行われ、200メートル近い高層ビルが2棟、80メートルほどのビルが1棟、計画されています。これだけでも莫大な利益が生まれます。

    • コモンだった空間やモノやサービスを独占し、非正規雇用で賃金をカットしていけば、短期的には手っ取り早くお金を儲けることができます。しかし、皮肉な話ですが、こんな楽なやり方に慣れてしまった企業からは、イノベーションを起こす力はなくなります。

    • 事業者側の視点だけで開発を推し進めれば、結果的に文化的価値のある遺産を壊してしまいかねません。対話さえ拒否する姿勢は、企業や行政の怠慢でしかありません。

    • 専門家や市民らの視点を取り入れることを、私は「コモンの自治」と呼んでいます。コモンの自治により、街の魅力も高まると思います。

    • コモンは、文化的な生活を送るために必要な財やサービスで、誰もがアクセスできるべきものであるからこそ、より民主的に管理・運営される必要があります。

 
【6月】
 
  • 齋藤潤の経済バーズアイ (第146回) 出生率が2.07を下回ってから50年経って 2024/06/04 日本経済研究センター
    • 総人口を維持するためには、合計特殊出生率(以下、出生率)が少なくとも2.07を維持することが必要

    • 日本の場合、出生率は今から50年前の1974年に2.07を下回り、その後、その水準を回復するには至っていません。日本の総人口が減少することは、1974年時点で運命づけられていたと言うことができます。

    • 出生率の低下傾向を受けて、総人口も2008年には1億2,808.4万人のピークを付け、その後は減少傾向にあります。2120年には4,973.3万人(2008年比▲61.2%減)まで減少すると見込まれています。

    • 総人口を構成する日本人人口と外国人人口別で見ると、2023年時点の実際の日本人人口は将来人口推計を17.0万人下回っているのに対して、外国人人口は「将来の人口推計」を11.4万人上回っているのです。将来人口推計では、2020年時点の274.7万人(総人口の2.2%)から、2070年には939.0万人(同10.8%)まで増加するとの予測となっています。

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【5月】
 
  • Well-being と Beyond GDP ―世界の議論は「脱成長」では無く、「成長と社会課題解決の両立」― 2024年5月24日 No.2024-007 日本総研
    • 近年、わが国では、脱成長論や資本主義の見直しが話題となっている。一方で、世界では、新資本主義の行き過ぎは修正すべきとしながら、反資本主義・脱成長とはなっていない。マーケットメカニズムをベースとしつつ、経済学、景気指標、経済体制を如何に修正するかという方向で議論がされている。その中で注目されるのが、Well-being とそれを考量した経済指標群の在り方を考える Beyond GDP である。

    • 国際機関の動きをみると、OECD は、所得だけでなく主観的幸福度まで考慮したWell-being 指数である Better Life Index(BLI)を策定。国連も、GDP を最重要とし、それを補完する指標まで考慮した、Beyond GDP 等について 2024 年の 9 月までに意見をまとめるとしている。また先進国では、省庁の垣根を越えて、解決すべき課題毎の Well-being 予算作成等の対応が進んでいる。これらの動きは、総じてみると、GDP をベースに、格差是正、自然環境の保全、社会的なつながりの確保、教育の改善等が考慮される傾向がある。一部に日本のメディアにあるような「脱GDP」という要素は海外の議論では見られないことに留意する必要。

    • わが国でも、Well-being や GDP beyond に向けた動きは見られているが、様々な課題がある。それに対しては以下のような対応が重要である。

      • 一部の世論にあるような脱成長ではなく、GDP を伸ばしながら、格差や環境等の様々な課題の解決を進める必要。欧米では生産性向上や賃金上昇も Well-eing向上策であると認識されており、日本も同様の認識を土台とするべき。

      • 有効な政策手法を整備すること。例えば、課題毎に各省庁の垣根を超えた予算枠を作るなどした場合、バラマキとならないように、データの整備と EBPM の推進、ルール化、監視体制の構築を進めて財政への負担を最小化すること

      • 地域に密着した地方自治体での取り組みを加速すること。デジタル庁主導で地域幸福度の導入議論が進んでいるが、指標の導入だけでなく、この指標の導入目的である「自治体が個性を磨く」「EBPM・ワイズスペンディングに役立てる」という観点が守られているかどうか、きちんとチェックしていくべき

    • 持続的な経済成長を実現させ、その上で社会課題も同時に解決することで、真に豊かな国を目指していくことが大事である。

 
 
  • 日本の6人に1人が貧困状態…厚生労働省が定める「相対的貧困」の基準とは 宿輪純一 ( 帝京大学経済学部教授) 2024年5月27日 Wedge ONLINE
    • 衣食住など必要最低限の生活水準が維持できない「絶対的貧困」(absolute poverty)と、その国(地域)の基準と比較してまともな生活水準に満たない「相対的貧困」(relative poverty)

    • 世界銀行は、2022年9月に1日「2.15米ドル」(約320円)を「絶対的貧困ライン」とし、この1日2.15米ドル以下で生活している人々を「絶対的貧困」と定義

    • 「相対的貧困」は、可処分所得が中央値の半分以下である場合を指します。つまり、その国の大多数よりも貧しい状態にあるということ

    • 日本では厚生労働省*5が「相対的貧困」を算出しており、所得が「約130万円」(貧困線)以下の場合を相対的貧困状態と定め、相対的貧困率は約15%としています*6。つまり6人に1人が貧困状態にあり、なかでも母子家庭の割合が高い

 

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  • 中国重慶帰りの西野亮廣が、“どんどん田舎になる日本”に危機感。海外では今「日本に発信しても得しない」という雰囲気が漂い、情報が入ってきていない!? 2024.05.03 GOETHE
    • インターネットで回ってくる情報は「過去の行動履歴や購入履歴や検索履歴から、あなたのためだけに選ばれた情報」であって、「世界の情報」ではない! あなたはその危険性に気づいていますか?

    • 「外貨を稼がないとヤバくない?」にはいくつか意味がある

      • シンプルに「食っていけなくないっすか?」という意味もあるのですが、「『知らないものに興味を持とうとしない』どころか、知らないものをすぐに否定したがる日本人の買うもの(選ぶもの)が固定化しているから、そこに合わせてしまうと、表現の幅が狭くなってしまう」という焦りも少しある

    • 何も知らない島国の人間として島国で生きるか、色々と知った上で島国で生きるか?

      • 移動が完全に回復したのにも関わらず、海外に出る人の数はコロナ前の半分以下になっている

【4月】
 
  • 第2回政治・経済・社会に関する意識調査(NIRA基本調査)(速報) 2024.04.26 NIRA
    • 政治家を「非常に信頼する」あるいは「信頼する」と回答した人は、全体の20%程度にとどまった。

    • 5~10年後の経済状況について悲観視する人が多く、世帯の家計状況が「悪くなっている」と回答した人の割合は50%近くになり、日本の経済状況が「悪くなっている」と回答した人の割合は60%近い。

    • 公的サービスの内容について、年金制度の満足度は著しく低い結果となった。

    • 公的サービスの質や給付を充実させるために、最も優先度の高い項目として、18歳から30代は「子育て支援」、40代以上は「年金」を選ぶ人が多かった。

 
 
 
​​[3月]
 
 
 
 

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  • 日本そのものが「ソフト老害」になっている…タイ長期滞在で痛感した「貧乏で老人ばかりの国・日本」の凋落ぶり 「暗い未来」を子に残そうとする愚 2024/03/12 9:00 PRESIDENT Online
 
 
  • Well-being “beyond GDP”を巡る国際的な議論の動向と日本の取組 March 2024 ESRI Research Note No.82 2024/03/01 内閣府経済社会総合研究所
    • 世界金融危機以降、GDP では捉えられない人々の満足度(Well-being)や経済社会の進歩の計測、その政策への反映に多くの国が取り組んできたが、コロナ禍を経て改めてその意義に注目が集まり、以前から取組の中心であった欧州、大洋州などに加え、アジア各国においても関心が高まっている。

    • こうした中、OECD や国連などの国際機関が Well-being の計測方法や GDP を補完する(Beyond GDP)指標群についての国際的な基準作りの議論を加速している。

    • OECD は従来から Well-being の動向を把握するためのフレームワークや「主観的 Well-being」の計測ガイドラインの策定に取り組んできたが、依然として国による違いも大きいことから、一層の標準化に向けた検討を行っている。国連はSDGs 目標達成の観点から GDP を補完する指標群の選定と合意を目指している。関係する機関や各国政府が連携しながら作業に当たっており、本年から来年にかけて取りまとめが行われる見込みである。

    • Well-being に関する国際的な基準作りには一定の意義があるものの、実際の計測や国際比較に当たっては様々な論点がある。Well-being を高める経済政策実現の観点から日本としても国際的な議論に参画していく必要がある。

​​[2月]
 
 
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​[1月]
 
 
 
 
 
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