研究論文 [~2023年]
【2023年】
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孤立・孤独予防に資する社会的選好と空間的選好の比較 近畿地方在住者を対象とした WEB アンケート調査 2021 における孤立・孤独複合類型分析 内平隆之,中嶌一憲,安枝英俊 日本建築学会計画系論文集 第88巻 第804号, 495-504, 2023年2月
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先行研究の動向から,孤立・孤独予防に資するアプローチには 3 つに大別できると筆者らは整理した。1 つ目は認知的処方,2 つめは社会的処方,3 つ目は空間的処方である。
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認知的処方とは不適応な社会的認知への対処を行う介入方法であると定義する。
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社会的処方とは,交流的・情緒的・実⽤的なニーズをもつ⼈々が,⾃らの健康とウェルビーイングの改善につながる解決策を自ら見出すことを助ける社会的手段を提供することと定義する。
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空間的処方とは,生活的・情緒的・実用的なニーズをもつ⼈々が、⾃らの健康とウェルビーイングの改善につながる解決策を⾃ら⾒出すことを助ける空間的手段を提供することであると定義する。マルシェや駄菓子屋,コミュニティカフェ,緑地など,気軽に立ち寄りやすく,開かれた場の孤立や孤独への空間的効果が指摘されている。
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社会的処方と空間的処方の違いについて補足する。社会的処方がリンクワーカー等を介して直接的な「つながり」を処方するのに対して,空間的処方,孤立・孤独等の課題を抱える人の日常生活における生活空間への介入により,間接的に「つながり」の場を提供する違いがあると筆者らは整理している。
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本研究では近畿地方在住者を対象に WEB アンケートを実施し(N=1053),本研究は孤立・孤独複合類型を目的変数とし,個人特性・個人気質と社会的選好・空間的選好とを分析変数とした,多項ロジット回帰分析を行った。
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本研究における孤立および孤独の各尺度は,回答者の心理的負担に配慮し,短縮尺度を採用した。孤立尺度は日本語版 Lubben SocialNetwork Scale 短縮版版(以降 LSNS-6),孤独尺度は De JongGierveld & Van Tilburg (2010)らが開発した 6 項目の尺度を採用した。
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個人特性(性別、結婚の有無、年代、世帯収入)、個人気質(big5診断・7 段階リッカート尺度)、社会的選考(社会貢献経験、知的謙虚さ、他者配慮)、空間的選考(近隣交流場所の有無、空き地空き家への不安感)を採用。
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孤立・孤独型は,男性が多い傾向があり、空き家に不安を感じにくいがMPE=-0.011),空き地に不安を感じやすい(MPE=0.016)という傾向がある。特に日時非決定的交流空間を持っていないことから,空き地を出さないための空き家活用か,空き地を緑地化する活動などを通じて,気軽にいつでも立ち寄れる空間的処方が有効であろう。
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非孤立・孤独型は女性が多く、社会貢献活動を社会的に処方し,親密で固定的な人間関係を作る支援が有効であろう。
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孤立・非孤独型は男性である傾向が高く、認知的処方のみならず,新たな挑戦の機会を社会的に処方していくことも有効かもしれない。
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最も健全な類型と考えられる非孤立・非孤独型はまちづくりの中で社会貢献の機会や日時非決定的交流空間を提供していくことを,孤立・孤独の一次予防策とすることが有効であろう。
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関連:孤立・孤独予防に資する社会的処方の検証 近畿地方在住者 WEB アンケート調査 2021 における社会貢献への関心分析 内平隆之,中嶌一憲 日本建築学会計画系論文集 第87巻 第801号, 2169-2178, 2022年11月
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「社会的孤立」研究の到達点と課題 石田史樹 日本の科学者 2020年55巻11号 発行日:2020年 公開日:2023/11/03
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本稿は,①社会的孤立という状態を貧困化という視点から歴史的・動態的に把握すること、②同時に,人間の生活とは何か,その特性から,生活史を分析すること,③社会制度としては所得保障から生活保障へと転換していくこと,④さらに,潜在能力という人間の持つ可能性に着眼し,援助の具体化を図ること,この 4 点の重要性を述べた.
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(1)P. タウンゼントによる社会的孤立研究
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社会的孤立研究の先駆けとして,日本の研究においても大きな影響を与えているのが,イギリスの社会学者 P. タウンゼントである.タウンゼントは,著書『居宅老人の生活と親族網』(1974)において,それまで混同されがちだった「孤立」と「孤独」を次のように関連づけた.「社会的に孤立しているというのは,家族とコミュニティとほとんど接触がないことであり,孤独であるというのは,仲間づきあいの欠如あるいは喪失による好ましからざる感じ(unwelcome feeling)をもつことである )」.そして,対象者と親族,隣人や友人との一週間あたりの平均接触回数,社会活動を得点化し,一週間に 21 の接触かまたはほとんどなし(あるいは 1 日に付き 3またはそれ以下)を「孤立している」と定義づけ,社会的孤立の量を把握したのである.
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(2)江口英一氏による「社会階層論」
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「社会階層」の視点から貧困問題を研究した代表論者に江口英一がいる.江口は,貧困の作用を最も強く受けている階層として「不安定就労階層」に着目した.「低所得・低収入なるがゆえに社会生活は圧縮され,社会的欲求や要求それ自体もしだいに畏縮し,長期的には心身の衰退,荒廃をまねき,社会的孤立と孤独の中に追い込まれざるを得ない」)と述べ,「低消費水準生活」と社会的孤立問題の関連性を指摘した.
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(3)河合克義氏による「ひとり暮らし高齢者」実態調査
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河合は,社会的孤立を,「生涯のなかでの労働と生活の不安定性=貧困に加えて地域社会と家族の脆弱性が生み出す孤立問題が社会的孤立」と定義づける.
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江口や河合は,社会的孤立問題が,労働と生活の不安定性と密接につながっていることを実証的に明らかにした.それらは,社会的孤立という状態を貧困化という視点から歴史的・動態的に把握することが重要であることを教示してくれる.さらに,貧困化の過程を,単に「生存」ではなく,人間の特性である「生活」9)という視点から,生活史を辿ることによって,対象者の人間的諸能力に着眼した援助視点も見えてくるであろう.
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元ホームレスの人々の生活史の特徴とは,元ホームレスの多くが長期の間,社会的孤立状態に置かれていたという生活史にある.
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第一段階は,不定住生活の段階である.不定住生活という不安定で劣悪な生活を選択せざるをえなかった状況において,「住民票」とともに社会的に保障される社会制度の利用,その権利を失っていく.
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第二段階は,不定住生活から野宿をはじめとした路上生活という生活様式が定着していく段階である.その生活様式は社会一般のそれとはかけ離れていることから,その生活様式が定着すればするほど社会性が失われていく.社会関係が希薄化していくとともに自尊感情も奪われていく過程は,究極の社会的孤立状態へと向かう過程と云える。
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第三段階は,路上生活を脱却した後の生活である.多くのホームレスは,何かしらのきっかけで生活保護につながることによって路上生活を脱却する.
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上記をふまえ次に,社会的孤立への支援策
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(1)所得保障から生活保障へ
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(2)社会性を支えるソーシャルワーク ―人間の「潜在能力」への働きかけ―
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アマルティア・センは貧困を「必要最低限の潜在能力の欠如」と定義した.センの指摘からは,人間発達に関わる生活問題を対象とする社会福祉の支援において,「選択」14)という視点が,いかに重要かが分かる.個々人の可能性が現実のものとなるための支援は,単なる所得保障や画一化された居場所作りだけでは不十分である.また,選択肢があればいいというわけでもなく,「選択」できる環境が整ってはじめてその人の潜在能力が発揮される「機会」が創出される.単に生きがいを与えよう,とりあえず役割意識を,楽しそうな時間をという漠然とした支援ではなく,参加者一人ひとりが一人の人格として集団に参加し,「潜在化」していた自らの特性を活かしていく,互いに活かしあう,その過程で自己肯定感・社会性といった人間性を復権していく,こうした生活の場と個別支援=エンパワメントにかかわるソーシャルワークが今日求められているのではないだろうか。
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Webアンケート調査に基づく独居高齢者の個人属性および外出行動と「孤独感」の関係性分析 山村崇, 後藤春彦, 伊藤日向子 日本建築学会技術報告集/27 巻 (2021) 66 号 ,2021 年 6 月
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個人属性に関しては、「性別」「子どもの有無」「年齢」「健康」が、孤独感と有意な関連を示した。
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外出頻度に関しては、人に会う必要に迫られて外出する「交流外出」、自分の楽しみのために外出する「余暇外出」が、孤独感と有意な関連を示した。
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外出行動のうち、日常の買い物などで義務的に外出する「日常外出」は孤独感に影響しないことが明らかになった。
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孤独感の小さい人は、他者との接点の多い余暇外出(友人と行く余暇外出、グループ活動への参加、ゴルフ等)に言及する割合が、孤独感の大きい人よりも有意に高かった。
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【2022年】
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地域のつながりの現状と課題 石田 光規 生活協同組合研究/552 巻 (2022)
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関連:誰にも頼れない社会が生み出す日本の孤独・孤立 社会 2021.11.09 石田 光規 nippon.com
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日本社会に特徴的なのは、「他者に危害を加える行為」に「世の中や他者への迷惑」が入ることだ。日本では、「自らの努力で問題を解決できず他人に頼る行為」は、他者に「手間をかけさせる」という損失をもたらす「迷惑な行為」としてタブー視される傾向がある。日本社会において、「個人の尊重」や「自由」といった標識の裏には、「世の中への配慮」という集団心理が隠されているのである。
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一定の資産とインターネットの接続環境さえ用意すれば、人と会わない生活も可能である。
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こうして一人で生活してゆけるシステムが整うと、人間関係は「結びたい人が好みに応じて結ぶ」嗜好(しこう)品の色合いを強めてゆく。今やつながりの中に強制的に落とし込められる時代ではない。
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言い換えると、私たちは人から離れる自由を得た代わりに、努力してお金を稼ぎ生活を維持する責任を負わされたのである。
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このような状況では、「困ったときに人に頼る」という人間社会の根本である互助的行為が難しくなる。先述したように、一人で生活してゆけるシステムの基本は、各人が生活費を稼ぎ自立することである。そこでもし周りの人に頼ると、そうした人は生活を維持する努力をせず怠けていると見られがちだ。ゆえに、日本社会では、救いを求めるささやかな声は、「甘え」や「他者への迷惑」の大合唱にかき消されてしまうのである。
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周りの人や世の中に対する責任を優先する「日本型自由主義」の社会では、困っている人の声に「迷惑」というラベルを貼り付け、切り捨ててゆく仕組みが内包されているのである。
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個々人の権利よりも周りの人や世の中に対する責任に目を向けがちな「日本型自由主義」は、他の国には見られないほどの規律・秩序と引き換えに、多くの孤独・孤立を生み出してしまうのである。
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社会的孤立の実態とその問題点についての考察 みずほリサーチ&テクノロジーズ 『個人金融』2022年冬号(2022年2月発行)
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みずほリサーチ&テクノロジーズ(2021)『社会的孤立の実態・要因等に関する調査分析等研究事業報告書』(厚生労働省令和2年度社会福祉推進事業)を活用して、社会的孤立の実態とその問題点を実証的に考察
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【2020年】
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「人間関係の希薄さに関する研究のレビュー:社会的孤立,孤独,SNS に注目して」 小田中 悠 (慶應義塾大学) 牛膓 政孝 (慶應義塾大学) 山下 智弘 (慶應義塾大学) 吉川 侑輝 (慶應義塾大学) 鳥越 信吾 (十文字学園女子大学) 2020 年 7 月 IPSS Discussion Paper Series (No.2020-J01) 国立社会保障・人口問題研究所
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日本社会における人間関係の希薄さが社会問題として取り上げられるようになって久しい.そこで,本稿では,そのような問題について扱った研究をサーベイし,人間関係の希薄さはいかなる概念・尺度によって捉えられるのか,他者との繋がりの弱さを生じさせる要因は何か,その状態はどのような困難を引き起こすのか,という問いに答えることを目指した.
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その結果,まず,人間関係の希薄さを捉える概念として,その客観的な側面を捉える社会的孤立と,主観的な感情に焦点を当てた孤独という 2 つの概念に注目すべきであることが分かった.
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ついで,それぞれを主題とした研究を概観し,以下のことを明らかにした.
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第 1 に,社会的孤立の要因としては世帯構成や集団への参加等が,孤独の要因としては文化・規範といった社会的なものが考えられている.
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第 2 に,社会的孤立と孤独はともにメンタルヘルスに悪影響を及ぼすとされている.その上で,現在用いられている主要な尺度を複数紹介した.
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最後に,現代において人間関係を維持・構築するための重要なツールであるインターネットや SNS と社会的孤立・孤独の関連を扱った研究を取り上げた.そこでは,インターネットや SNS が社会的孤立・孤独を緩和するような効果を持つことが確認されている一方で,調査方法や尺度については,人々が利用するサービス自体が流動的なものであるため,逐次検討していく必要があることが分かった.
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[2015年]
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社会福祉領域における社会システム論の導入に関する考察 寺田貴美代 新潟医療福祉学会誌 14 (2), 21-27, 2015-03 新潟医療福祉学会
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社会福祉領域では、ソーシャルワーク研究を中心にシステム論が積極的に導入されており、日本の社会福祉研究においても理論的発展を遂げてきた。ただし、ここでいうシステム論とは一般システム論を指すことが多く、社会システム論に依拠する国内の研究は極めて数が限られている。現状では一般システム論に比べ、社会システム論はあまり浸透していないと言わざるを得ないが、導入の意義自体は日本の社会福祉研究において30年以上前から論じられ、現在まで複数の論者によってその重要性が指摘され続けている。
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そこで本稿では、社会システム論が日本の社会福祉研究に、これまでどのように導入されてきたのかをまとめ、社会システム論の知見を活かした研究の蓄積を整理した。
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その際、先行研究に適用されてきた社会システム論は、パーソンズによる社会システム論と、ルーマンに代表される新しいシステム論に大別でき、それぞれ独自の系譜があるため、本稿でもこれらを区別して整理した。
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その結果、社会システム論には日本の社会福祉領域の文脈に置き換えても十分参考になる知見が数多く含まれており、社会システム論の有効性や可能性が高く評価されていることが明らかとなった。
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ただし、理論的な限界も指摘されており、その導入に際しては、近接領域も含めてこれまで培われてきた幅広い知見を参考にして十分に吟味した上で、社会福祉研究に生かす必要があることを指摘した。
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【2014年】
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エビデンスの観点から見た「うつ病」と「自殺」の関係 (富山大学保健管理センター)斎藤清二 季刊ほけかん No.64 2014.12 富山大学保健管理センター
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米国におけるうつ病(感情障害)患者のうち、自殺の危険性のために入院の必要があった(通常重症のうつと判定される)人を除く、軽症~中等症のうつ病の患者の生涯自殺率はトータルでは 3%前後と考えられる。つまり、うつ病と診断された集団の 97%の人は生涯自殺しない(言い換えれば、自殺以外の原因で一生を終える)。
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ところで米国の全ての人口での生涯自殺率は約1%であると言われている。よって、うつ病の人が自殺で生涯を終える可能性はやはり、全人口の平均より 3 倍程度高いのである。つまりうつ病は確かに自殺のハイリスクであることは間違いがない。しかし、うつ病の人の大部分は自殺では死なないということもまた事実なのである。
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【2013年】
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孤独感を媒介としたソーシャルサポートの授受と中高年者の精神的健康の関係 UCLA 孤独感尺度第 3 版を用いて 豊島 彩,佐藤眞一 老年社会科学 第 35 巻第 1 号 2013. 4
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本研究は,中高年者を対象としてソーシャルサポートの受領と提供が孤独感を低減する効果,および両者の精神的健康との関連性を検証することを目的とした.
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50歳以上の男女を対象として質問紙調査を実施し,326人を分析対象者とした.本研究では孤独感を測定する尺度としてUCLA孤独感尺度第3版を用い,確認的因子分析により信頼性を確認した.その後,精神的健康(WHO-5),ソーシャルサポートの授受,主観的経済状況,主観的健康度を変数とするパス解析を行った.
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その結果,情緒的サポートは孤独感と関連性が認められたが,道具的サポートとの関連性は有意ではなかった.また,ソーシャルサポートと精神的健康との直接的な関連性は,道具的サポートの受領を除いて認められなかった.
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本研究の結果から,ソーシャルサポートが精神的健康に及ぼす効果は,サポートの有無を認知することが直接的に影響するのではなく,孤独感という不快感情を低減することによる効果であると考えられる.
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【2011年】
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地域社会づくりにおける「つながり」概念の検討 鎗田進也 立正社会福祉研究 12巻2号, p. 37-44, 発行日 2011-03-15 立正大学社会福祉学会
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論文及び資料の中で「つながり」という用語を掲げている研究者や実践家の「つながり」に関する記述をみると,「つながり」には次の7つの要素があることがわかる.「連帯」,「交流」,「人々との情報交換や学びあい」,「情緒的な共感」,「ふれあうこと」「社会的ネットワーク」「相互扶助・支え合い」である.
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「社会的ネットワーク」には,第1に,個人間だけのネットワークではなく,個人と組織,組織と機関というように複数の対象によるつながりがある.そして第2に,そのつながりにはグラノベッターが述べるように,紐帯の強度により違いがあるということになる.
SC(人々の協働行動を促進することによって社会の効率を向上させることのできる『信頼(trust)』,『規範(norms)』『ネットワーク(networks)』といった社会組織の特徴を表す」の概念を踏まえると,複数の個人間,複数の個人と組織間との紐帯を測る指標としては,先にあげた接触頻度や親しさだけでなく,相手に対する信頼や愛他的な相互性がある、直接顔を合わすネットワークが核ということになる。 -
つながりを構築するためには,単に,地域社会において自分の存在を他の人に知らせるだけではなく,自分が困っているときに助け合える関係づくりまで発展させることが重要である.したがって挨拶等の簡単な関わりだけではなく,相互支援できるような関係を構築できるような交流が必要なのである。
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地域社会づくりにおける住民のつながりの中身というのは,愛情や信頼感等の心地よさを感じるカタチであるべきだと考える.しかしその中身は,かつての家族の中に見られた相互依存や強固な団結といった関係性ではなく,自立した個人間での相互支援に基づくことが重要である.閉鎖的であることは現代において望ましくないからである.
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地域社会づくりにおける「つながり」に関して定義したい.地域社会づくりにおける「つながり」とは,「『小学校区』や『中学校区』を範域として,その中で共通の目標に向かって住民と住民が相互に関わりあいながら,2人以上の自立した個人である住民が直接顔と顔を面して互いに関心を持ち,ギブ・アンド・テイク(Give andTake)の相互支援を行うことで,安心感や孤独・孤立感を解消できるような家族的な機能を地域社会の中で実現し,強固に拘束された状態ではなく,比較的自由な状態ではあるが,その中の一員であるという感覚を得られる心地よい状態」と定義する.
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【2002年】
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場所と認識を現象学的アプローチによって試み 小沢一仁 2002 東京工芸大学工学部紀要 人文・社会編 25巻2号
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「場所」という言葉は、日本の日常会話でよく聞かれる。この研究は、アイデンティティ危機に陥った若者の中には、社会の中で生きることの重要性を見出せず、社会の中で自分の居場所を見つけようと奮闘している人がいることを示唆している。
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「場所」という言葉には、文字通りに物理的にとらえられる意味と、人がその場所について感じる居心地のよさという2つの意味がある。大学生が大学に所属していないと感じる場合、それは、自分が所属する具体的な場所である大学に居心地の悪さを感じていることを意味する。
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ある場所で居心地の悪さを感じる原因としては、次のようなことがあげられる。第一に、人々が努力しても人生で求めているものが得られない状況である。例えば、心理学を学びたい大学生が、大学で心理学を学ぶ機会を与えられていない。第二に、人々がその場所でニーズを失ってしまう状況である。これは、学生が学校で何を学ぶつもりなのか、大学に行く目的が何なのか、漠然としている例である。
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エリクソン(1959)は、人生の危機という概念を展開した。彼の理論によれば、どこにも居心地のよい場所が得られない人は、アイデンティティの危機に陥る可能性がある。言い換えれば、彼らは社会で生きていくために大切なものを失っているとみなされる。
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