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日本・社会課題 [2024年1月~]

【9月】
  • 〈新米は安いのか、高いのか〉コメ不足解消へすぐにできることと、これからなすべきこと 渡辺好明( 新潟食料農業大学名誉学長)2024年9月10日 Wedge ONLINE
    • 望ましいコメ政策のあり方に関し、筆者はWedge ONLINEで以下の主張をしてきた。

      • ① 価格は競争に委ね、所得は直接支払いで補うことで、経営持続を図る。

      • ② 需給調整は市場の価格シグナルで誘導する。

      • ③ 1年1作であるコメ作の経営計画が立つように先物市場を整備しリスクヘッジを可能にする。

      • ④ 食料安全保障の観点から、コメの生産調整は取り止め、①②③によって国際市場での競争力を持たせ、輸出を増やす。今回の「コメ不足」のような緊急時には輸出を国内供給に振り替える。

    • これによって、生産者には経営の持続が可能となり、消費者には、高米価と生産調整に伴う財政負担(=税金の支払い)という〝二重負担〟から免れられ、いざという時の基礎食料の供給も保証される。そして、直接支払いへの政策転換に必要な財源は、現行予算の組み替えなどで捻出は可能である。

    • 米の品薄、高価格、食料の安全保障に関する危機感、世論の<米の生産抑制政策は転換を>などの声を踏まえて、国民的議論をなすべきときが来たのでは ないだろうか。

 

  • 国家安全保障問題から見た、出生率低下と高齢化社会についての分析 —— 問題の切り分けと解決策の可能性の提示 マンスフィールド・フェロー トニー・アーノルド大尉 NIDSコメンタリー 第351号 2024年9月6日 防衛研究所
    • 日本の著しく低い合計特殊出生率は、急速な経済近代化が伝統的なジェンダー役割期待の適応を上回った3型の国々に特有の社会経済的ダイナミクスに部分的に起因していると考えることができる。

    • このような社会では、女性は高度に競争的な経済において男性労働者と同等のパフォーマンスを求められる一方で(2型の国々のように)、子育てに対してほぼ全責任を負うことも期待されている(1型の国々のように)。日本の場合、この二重の負担は、多くの女性が「マミートラック」と「キャリアトラック」の間で選択を迫られる厳しい環境を生み出す。

    • 前者では、家族を育てるために早期に労働市場から離脱することが多く、後者では、厳しい仕事と家庭の責任を両立させる圧力により、結婚や出産の計画が先延ばしにされるか放棄されることが多い。いずれの場合も結婚が遅れ、その結果として、子供がいない未婚者が増加し、合計特殊出生率が大幅に低下する要因となっている。

    • 既婚日本人カップルが子供を持つ数が減少しているが、子供を持たない未婚者の増加が合計特殊出生率により大きな影響を与えているようだ。

    • 結婚までの期間が長くなることが、多くの人々が結婚を諦めた層に押しやっている要因であると考えることができる。

    • 結婚の遅れは完結出生子の減少につながり、子供がいない、または一人しかいない夫婦の増加を引き起こす。子供のいない未婚者の増加と合わせて、結婚までの期間の延長とその結果としての完結出生子の低下は、結婚の遅れが日本の低い出生率の最も有力な中心的要因であることを浮き彫りにしている。

    • 本論文で議論された世界的な傾向を鑑みれば、出生率を高める文化や慣習も育成しない限り、これらの問題に対する取り組みが出生率にもたらす増加は僅かなものに留まる可能性が高い。

    • 出生率低下と高齢化社会は、21世紀の国家安全保障上の最大の課題となるだろう。これは日本だけでなく、先進国全体にとっての課題である。社会は、地域紛争や気候変動のような他の重大な脅威と同時に、人口減少の結果を管理することを強いられるだろう。デイビッド・ゴールドマンは2011年の著書『How Civilizations Die』で、「文明が自らの未来に対する信頼を失うと、それは衰退する」と警告している。

 

  • 人口減少下での100年後の日本を考える 地域、都市、家族のゆくえ RIETIファカルティ・フェロー 京都大学経済研究所 森知也 20240904 外部有識者等による研究所内講演会 財務省 財務総合政策研究所
    • 国・地方自治体による政策と現実のズレが大きい

    • 民間による都心再開発と現実のズレが大きい

    • 都市(人口集積地)人口規模と都市の人口順位の片対数図はほぼ直線=べき乗則 ⇒ 国際的な普遍的な秩序

      • 他の地域単位(行政界)ではべき乗則は成立しない

    • 100年後に7割以上の都市が消滅

    • 大都市の人口・都心の人口密度は半減から7割減 ➔ 都心の高層ビル・タワマンの廃墟化

      • 地方都市のタワマンは真っ先に廃墟化(大都市とは違い、すぐこれから人口減少が始まる。)

    • 「地域生活圏」(国交省)の持続可能人口しきい値 :10万人

      • 10万都市は、2020年の83都市から100年後には20~30に減少 ➔ ほとんどの地方都市が廃墟化

    • 世帯や企業の立地の動機に逆行 (世帯や企業の立地は分散する傾向)

      • コンパクトシティ政策 都市機能・居住地を都心に寄せる (現在703市町村が取り組み中)

    • 100年後の楽観的未来 — 大都市編 今より安全で豊かな生活ができる

      • 低密度化 ➔ 災害に対して強靭な街へ

      • 低層化 ➔ ひとの交流が生まれ、地域コミュニティが再生

      • 交通網の集約 ➔ 自動運転・物流自動化への親和性向上

    • 100年後の楽観的未来 — 地方編 特に、幹線から外れた地方に可能性

      • 本来の地域の優位性に基づく産業構造へ転換(国の補助金に依存した既存の産業構造からの脱却)

      • 豊かな自然資源を活かした収益性の高い1次産業に特化 ➔ 適切な人口規模に縮小

      • スケーラブルなインフラへの転換

    • 都会と田舎の両方で暮らす二拠点居住 ⇒ スマートに縮小した都会と田舎を結ぶ、新交通手段の実用化

【8月】
  • 不作でもインバウンドでもない コメが買えない「本当の理由」 毎日新聞(2024年8月18日)に掲載 2024.08.30 キャノングローバル戦略研究所
    • コメが不足しているのは減反政策のせいですよ。ギリギリの生産態勢でやり繰りしているから、訪日客の消費が少し増えるなど、ささいな需要の変動があるだけで、あっという間に品薄状態となり、価格が高騰してしまう。それが今、足元で起きていることの本質です。

      • 減反というのは、コメの生産を減らして、市場価格を上げる政策です。コメ農家が麦や大豆など他の作物に転作すれば、国が補助金を出す仕組みです。日本はこれを50年以上も続けているのです。

    • 減反政策のせいで、コメの単位面積当たりの収穫量である「単収」を増やす品種改良は止められています。今や、単収で比べると、カリフォルニアのコメは日本の1.6倍、かつて日本の半分しかなかった中国のコメは日本を上回っています。

    • 減反は消費者のためにも、農業のためにもなっていません。価格が下がって困る主業農家には、欧米のように財政から直接支払いを行えばよいのです。

    • 日本のコメは、コメのロールスロイスとして売ればいいわけで、安価なコメと競争する必要はない。適度な価格をつければいくらでも売れます。実際、米カリフォルニアでは今、同州産のコシヒカリが日本のスーパーより高い値段で売れています。

    • コメの年間生産量は現在、700万トン弱ですが、減反を止め単収の高いコメに変えれば、1700万トンを生産する実力はあります。1700万トン作って、1000万トンを輸出に回せば、安全保障上のメリットは大きい。

 
 
  • 【日本の山は常に死と隣合わせ】林業経営の最大リスクは労働災害、安全への知の結集を中岡 茂( 技術士(森林部門)、林野庁OB)2024年8月16日 Wedge ONLINE
     
  • 観光税でオーバーツーリズム対策、欧州の町の「無慈悲な現実」 バルセロナ、アムステルダム、ベネチアの本音を聞いた 2024.08.14 NATIONAL GEOGRAPHIC
    • 観光客の集中が問題になっているヨーロッパの都市はいずれも、混雑を緩和し、地元住民の不満をなだめるために、新たに観光税を導入したり、既存の税額を引き上げたりする措置を迫られている。それでもバルセロナ住民の怒りは治まらず、最近も、観光客反対のデモ参加者が観光客に水鉄砲を浴びせる事件が起きた。

    • オーバーツーリズムの問題と、観光が町の維持に貢献するのかという論争の中心のひとつが、スペイン最大の観光都市、バルセロナだ。2023年には、1560万人の観光客を受け入れた。バルセロナには2種類の観光税がある。最初の観光税は、ホテルの宿泊客とクルーズ船の乗客を対象で、2つ目の観光税(サーチャージ)の3.25ユーロ(約520円)は全て市の収入となる。2つ目の観光税(サーチャージ)の3.25ユーロ(約520円)は全て市の収入となる。この2つの観光税によって、バルセロナ市議会は2024年に9580万ユーロ(約153億円)の収入を見込んでいる。

    • オランダの首都アムステルダムは、ヨーロッパの都市のなかで最も高い観光税を導入している。宿泊費の12.5%が課税される。それでもまだ観光客は町にやってくる。2023年には、約900万人の宿泊客がアムステルダムを訪れた。2024年に2億4400万ユーロ(約390億円)の観光税を見込んでいる。

    • 「観光税が引き上げられれば、アムステルダムの外にあるホテルに宿泊して、町のなかには日帰り観光に行くという人が増えるでしょう。そうなれば、アムステルダムにとっては観光客による負担だけが残って、税収が減るということになりかねません。同様の問題が起こっているベネチアが、日帰り観光客への税金を導入した理由の一つはそこにあります」

    • イタリア古都ベネチアは、年間約3000万人の観光客が訪れるが、そのうち2400万人が日帰り客。試験期間中に観光客の数は減少せず、地域社会も恩恵を受けていないという。

    • どちらの都市も、観光税は流入したものの、深刻化するオーバーツーリズムの解消には近づいていない。

 
  • なぜ日本はここまで貧乏な国になったのか…安倍晋三氏から相談を受けていた筆者が思う「アベノミクスの壮大な失敗」 海外に出稼ぎ売春する女性まで出現している 2024/08/13 8:00
    • 「ゼロ金利政策」は、1999年2月、バブル崩壊・金融危機を受けて速水総裁時代に始まった。前述したように2000年、ITバブル景気に乗って一時解除されたが、翌年、ITバブルが崩壊すると復活。2006年に解除されるが、リーマンショックを機に再びゼロ金利に戻った。

    • 以降、アベノミクス導入後もゼロ金利からマイナス金利に強化される形(2016年2月から)で継続してきた。「ゼロ金利」は、この25年、数年の合間を除いて継続してきたことになる。

    • ゼロ金利は「前例のない極端な政策だった」「リスクをカバーするために金利があるわけですからね」。

    • 「ゼロ金利」という「極端な政策」を取り続け、ぬるま湯に浸かりすぎた結果、我々は「構造改革」といった険しい道を避けて歩いてきてしまったのである。一人当たり労働生産性からみても2022年の統計(ILO)で、世界で45位と生産性の落ち込みも相当に激しい。2024年には、GDPの指標でドイツに抜かれ、世界第四位に転落した壮大な失敗。残念ながら新たな産業、日本の食い扶持を育てることが達成できなかった。そのうえ、人口も減ってしまった。

    • 2024年3月19日、金融政策決定会合において、日本銀行は「マイナス金利政策」解除を決定した。しかしながら、異次元金融緩和を続けすぎた結果、日本銀行のバランスシートが傷んでしまっていたために、機動的な金利政策が取ることができない。

    • 出稼ぎ売春する女性が出現するほど貧乏になった。「歳出カット」「財政再建」しか選択肢が見当たらない。

    • 日本経済が加速度的に生産性を向上させ、適度な経済成長によって物価高→賃上げという景気の好循環にならなければ、円の価値が戻ってこないのは自明のことだ。

 
  • 日本の少子化問題が解決できない「本当の理由」 少子化の要因は晩婚化や晩産化などではない 荒川 和久 : 独身研究家、コラムニスト 2024/08/10 7:00 東洋経済ONLINE
    • 政府の少子化対策が効果をあげられないのは、それが子育て支援一辺倒であるからです。子育て支援は否定しませんが、それをどれだけ拡充させても出生数の増加には寄与しません。

    • 出生数が激減しているのは、一人目が生まれてこない問題だからです。一人目が生まれてこない問題というのは、イコール婚姻数が増えていない問題です。

    • 出生順位別の合計特殊出生率の長期推移をみれば、第一子を産めば、少なくともそれと同等以上の第二子以降が誕生しているわけです。

    • 出生数が減っているのは、20代までの第一子の出生数が減っているからであり、20代までの第一子出生数が減っているのは、20代までの初婚数が減っているからであるということになります。

    • 出生数の減少を本気で抑えたいのであれば、この20代での初婚数の減少幅を小さくしないとほぼ意味がないということです。

    • 20代で初婚や出生をしなかった層は、そのまま30代でもしないままという状況に変わっています。特に、20代女性が結婚に踏み切るには、夫となる相手の経済力を気にしないわけにはいきません。昨今夫年上婚は激減しています。婚姻数の減少はほぼ夫年上婚の減少によるものです。

    • 「マッチングアプリ」で婚活支援は的外れと言わざるを得ません。大事なのは「婚活支援」ではなく「若者が若者のうちに結婚して家族を持てると思える環境支援」のほうです。そして、その環境のもっとも比重の大きい部分は経済環境です。

    • 表面的な「支援をやってる感」の対策ではなく、実質可処分所得をあげて、中間層の若者の心の余裕を整えることこそ必要だと思います。

 
  • 誰も語らない「少子化問題の特効薬」とは?国の子育て支援など効くはずがない実情 沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 2024.8.9 8:00 DIAMOND online
    • 子どもを産むのは女性なので、女性が高学歴化すればするほど、在学中に結婚・出産をする確率が極めて低くなるため、その年数分婚期が遅れていくことになる。死産リスクやその後の母子の健康状態を考慮すると、出産の適齢期間は限られている。そのため、長期的には晩婚化で産む子どもの数も減ることになる。

    • 直近30年の傾向を見ると、出生件数に最も影響するのは婚姻件数である。婚姻件数と出生件数は1年のタイムラグをもって強い相関性を持つ。「出生件数÷前年の婚姻件数」の数字は1992年以降1.4~1.6の間で安定しており、直近2年も1.54である。直近20年平均は、東京都1.23、1都3県(首都圏)1.38で変わっていない。この出生率の低下原因は、単純に婚姻件数の減少が主因となる。

    • 50歳時の未婚者割合を生涯未婚率というが、2021年には女性が14.6%であるものの、今後は急上昇し、25%を目指す展開が予想されている。少子化対策の本丸はこの未婚率の上昇を抑えることに尽きる。

    • 日本全国どこでも、男女のマッチングを盛んにする仕組みやインセンティブに注力した方がいい。ブライダル産業もその1つで、式場だけでなく、宝飾品・贈答品・花などへの波及効果は大きい。また、引っ越し(家の住み替え)においては家具・家電・車などの同時購入効果も大きい。

    • 結婚する夫婦に国を挙げて「お祝い金」を配布するのも効果的な政策だと私は考えている。初婚で29歳以下の女性には一律80万円、同じく30~34歳以下には40万円を支給する制度を作ったらどうだろうか。年齢で差をつけるのは駆け込みが起こるからだ。これは、結婚に金銭的なインセンティブを付けることは、出産する夫婦への支援と同じことだという仮説に準拠している。

    • 出産後の子育て支援に向かいがちな少子化対策は、頭でっかちで人間の「本能」を軽んじている。

 
  • 地方間で人口を奪い合った10年 ~地方創生10年の「これまで」と「これから」①~ 2024.08.02 SOMPOインスティチュート
    • ​地方創生の根幹となる法律「まち・ひと・しごと創生法」が施行されてから10年を迎えて、国は地方創生を振り返る報告書を発表した。同報告書は地方創生が想定どおりに進んでいない面についても率直に記された異例のものといえる。

    • 地方創生は、東京一極集中の是正により日本全体と地方の人口減少の対策という「二兎」を追ったものといえるが、若い女性の仕事創出が地方で進まなかったこと等を背景に、東京一極集中の是正はあまり進まなかった。

    • その一方で、少子高齢化による自然減少が避けがたいことから、地方では社会増加を目指して地方間の人口争奪戦が激化した側面は否定できないであろう。

 
  • 副業・兼業による人材のシェアが鍵 ~地方創生10年の「これまで」と「これから」②~ 2024.08.02 SOMPOインスティチュート
    • 国の公表した地方創生10年を振り返る報告書では、今後の地方創生にあり方に関わるいくつかのキーワードが提示された。

    • 地方創生のブラッシュアップ版であるデジタル田園都市国家構想も合わせて考察すると、今後の「多極集住」が強まる中で、人口が集まる地域経済の中心都市を中心に「地域交通のリ・デザイン」「スタートアップ」等において、同じような課題を抱えた地域や関連する施策の連携が重要となる。

    • その際に鍵となるのは、リモートワークや副業・兼業の推進により、東京と地方が人材を奪い合うのではなく、人材をシェアする発想であろう。

  • 日本の課題:人口増に頼らない経済成長をどうやって実現するか 2024年8月1日 (公財)国際通貨研究所
    • 一般にマクロ経済分析では、成長の源泉を労働・資本・技術革新の3つに分解する。

    • 総人口、労働力人口のいずれも減少し始めている日本は、大きな政策変更がない限り、当面人口増に頼った成長を望むことができない。成長力を高めるには、設備やインフラなどの固定資本投資を増強し、研究開発を進め技術革新を実現する必要がある。

    • 日本の資本ストックの伸びは極めて小さい。2010 年代を比較すると、米国 1.3%、ドイツ 1.3%、イギリス 1.6%に対し、日本は 0.4%でしかない。資本ストック伸び悩みの原因としては、第一に日本経済の期待成長率が停滞するなかで、企業が国内での設備投資を抑制したことが考えられる。次に、国の財政状況が悪化するなか、公共投資を抑制した効果も無視できないだろう。住宅投資の不振も影響したはずである。

    • 統計上、技術革新は全要素生産性(Total Factor Productivity)と呼ばれている。日本の TFP 上昇率は、1980 年代には平均 1.1%と諸外国に比べ高かったものの、続く 20 年間は低下している。この間、世界的に IT 革命が進行し、日本も例外ではなかったにもかかわらず低迷していた。バブル崩壊後の低成長下で日本企業が積極的な経営ができず、技術革新の取り込みにおいても劣後したことを示唆している。

    • 人口減社会の日本が成長率を高め豊かな生活を実現するためには、結局、固定資本投資を増強するしかないだろう。固定資本投資には研究開発も含まれるため、投資を増やせば技術革新効果にも期待が持てる。

    • 実は、GDP に占める固定資本投資の割合をみると、日本はすでに主要国の中で一番高い。日本の固定資本投資比率は 25%を超えている。日本国民はすでに長年、消費を我慢し、投資に所得を振り向けているのである。今後さらに消費を削り投資を増やすことは、少子高齢化が進行するなか、容易ではないように思われる。

    • 資本ストックが大きくなればそのメンテナンス、更新のための投資の割合が大きくなる。そのうえ既存インフラの老朽化も進行している。さらに日本は地震大国である。インフラを守りつつ、資本ストックを増強していくことは、膨大なメンテナンスコストを払ったうえで、さらに投資を積み増すということに他ならない。

【7月】
  • 「過去最低を更新」日本の国際競争力の本質的課題 8つの「潜在変数」が示す競争力向上への突破口 2024/07/31 三菱総合研究所
    • IMD(国際経営開発研究所)が作成する「世界競争力年鑑」2024年版(2024年6月公表)によれば、日本の国際競争力順位(総合順位)は38位と、2023年の35位からさらに順位を下げ、過去最低を更新した。同年鑑の公表が開始された1989年からバブル期終焉後の1992年まで、日本は4年連続で1位の座を占めたが、そこから年を追うごとに順位を落としてきたのである。

    • 設定した潜在変数は、図中に楕円形で示した「組織資本」「人的資本」「知識資本」「起業・新陳代謝」「グローバル化」「法・制度・規制」「デジタル化」「脱炭素」の8つです。

    • 8つの潜在変数はいずれも競争力を規定する要因ですが、中でも「起業・新陳代謝」や「グローバル化」「組織資本」「法・制度・規制」の順で競争力に与える影響が強く、「脱炭素」が影響はやや弱いことがわかりました。

    • 潜在変数同士の相関関係によると、「起業・新陳代謝」が盛んな国では、それを支える「法・制度・規制」や「人的資本」「組織資本」「デジタル化」も整備されていると推測できるのです。

    • 産業界で「起業・新陳代謝」が進まず、労働市場の流動性も低いために、“稼げる業界”にヒト・モノ・カネが集中できていないのです。コロナ禍に際して、日本は従来にも増して「起業・新陳代謝」の促進より「企業の存続支援」に政策の重点が置かれました。

    • 「意思決定の迅速性」や「変化する市場への認識」が軒並み低い日本企業

 
  • 日本人、過去最大の86万人減 少子化を反映、東京のみ微増 2024/07/24 KYODO
    • 総務省が24日に発表した人口動態調査によると、今年1月1日時点の外国人を含む総人口は1億2488万5175人で、前年を約53万2千人下回った。日本人に限ると約86万1千人減(0.70%減)で、1968年の調査開始以降、最大の減少幅。都道府県では、東京のみ微増した。深刻な少子化を反映しており、地域の活力を維持する取り組みが急務だ。一方、外国人は全都道府県で増え、初めて300万人を超えた。

    • 調査は住民基本台帳に基づく。日本人は1億2156万1801人で、15年連続のマイナス。死者が過去最多の約158万人だったのに対し、出生者が最少の約73万人と大きく下回ったことが響いた。

 
  • 日本に欠けていたもの ~長期停滞の背景~ 2024年8-9月号 田代泰久 立教大学 名誉教授
    • 国民の意識の中で、皆の生活の共通基盤となる公共施設や環境を協力して整備しようという意欲、言うならば「公欲」部分が弱いと、衣食やレジャー等、フロー面で個々人の豊かさは実現できても住・環境・文化・福祉・安全等に関わる社会資本ストックの拡充は行き届かず、国民生活の真の向上は期し難い。需要不足で経済も停滞する可能性がある。1980年代を迎える頃から今日に至る迄の日本は公欲欠如の悪しき典型である。

    • 高度成長で三種の神器的豊かさが実現された後、国民の間に新たな時代にふさわしい欲求としての公欲が残念にも育たなかったことが大きく作用している。

[6月]
  • 村木厚子さんが語った「働き方改革」成功のカギとは 少子化との関係「答えは分かっていたのに…」 2024年6月15日 03時00分 東京新聞
    • データから、当時悩みだった少子化も、女性に働いてもらうのも、男性のライフスタイルが大きく関わっていることが分かりました。圧倒的に共働きが増えてるという社会の変化の中で、会社の中で年齢が高い人と、実際に今子育てしてる人たちとは、家族像とかライフスタイル像が全くずれるのでなかなか難しい。

    • 働き方改革が成功する3つのポイント 「労働時間を短く」「柔軟に」「給料をフェアに」

      • 1つは長すぎる労働時間を短くすること。

      • 2つ目は8時間働けるけど、今日はごめんとか、この日何曜日の何時からはダメとか、今日は在宅などと言える柔軟性だと思っています。

      • それからもう一つ最後に大事なのは、そうしたいろんな働き方をする人がいる時に、お給料を職場への貢献でフェアにきちんと払うっていう仕組みができる。

        「働きやすさ」と「働きがい」が大切

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  • 2040年の住宅市場と課題 ~「危険な空き家」倍増の恐れ、空き家問題は次のステージへ~ 2024年6月13日 野村総合研究所
    • 2024年4月に公表された「住宅・土地統計調査」によると、2023年の空き家数および空き家率はそれぞれ900万戸、13.8%であり、NRIが昨年度に予測した2023年の空き家数および空き家率(それぞれ1,136万戸、17.4%)と比較して下回った。

    • 上記の主な要因である世帯数の増加は、今後も2030年代半ばまでは継続が見込まれる。直近の除却水準が継続した場合、空き家率は2043年時点で25%となり、昨年度にNRIが予測した2038年時点の空き家率(32.0%)と比較すると“空き家全体の増加”は緩和されたと言える。

    • しかし住宅の建て方別に着目すると、集合住宅(共同住宅+長屋建)の空き家率が減少している一方で、一戸建の空き家率が上昇している。これらは、世帯数増加を牽引する単独世帯からの居住先としての選ばれやすさが影響していると考えられる。

    • 単独世帯以外の世帯数の減少加速に伴い、一戸建の空き家は急増し、2043年には2023年時点の2.6倍になることが見込まれる。また、一戸建の空き家は、腐朽・破損ありの割合が相対的に高い。一戸建の空き家増加によって、腐朽・破損のある一戸建・空き家の数は2043年には2023年の2倍以上に増加する見込みである。

    • 安全上の問題が大きい腐朽・破損のある「危険な空き家」の数は、直近減少傾向にあるが、今後は一戸建に限らず増加に転ずる見込みである。このような空き家は、まちの景観を損ねるだけでなく、災害時に倒壊する恐れや犯罪の温床となる可能性もあり、社会課題として無視することはできない。

    • 空き家全体の増加は緩慢化したものの、新たに「危険な空き家」増加問題が顕在化しつつあり、空き家問題は次のステージに移行している。「危険な空き家」増加を防ぐためにも、情報発信強化や制度設計によって、これまで以上の除却推進が求められる。

 
  • 国立大学「もう限界です」財政難に授業料値上げの動き いま考える「大学教育の受益者は誰?」 2024/06/13 08:00
    • 国立大学運営の基盤的経費として、各大学には国から運営費交付金が配分されている。例えば東京大学の場合、2022年度の決算報告によると、全体でおよそ2900億円の収入のうち、およそ830億円を占めるのがこの運営費交付金だ。

      「運営費交付金の8割は基幹経費である高熱水料や人件費が占める。これが増えることはあまりない。削減された中で努力してきたが、限界が来たということだ」(永田会長)

    • 国立大学が法人化された2004年以降、運営費交付金は徐々に減額され、20年前と比べるとおよそ1600億円減少。

      山田進太郎D&I財団COOの石倉秀明氏は国立大学の意義について「元々、国立大学は『お金の心配をすることなく、学びたい人が高度な教育を受けることによって社会に還元していく役割のために国が運営する機関』であったはずだ。だが、今は国立と言いながら運営は大学が行い、交付金はあるが使い道も限られており、大学自身による稼ぎ方にも制限があるなど、制度自体が本末転倒になっているのでは」と指摘した上で、国立大学を一括りにして議論することの限界を指摘する。

    • 関連:大学経営難しくするガバナンス強化、再考の時期に 変わる学術統治(下) 2024年06月12日 ニュースイッチ
      • ​目標ごとに適切な組織形態や意思決定プロセスは変わる。役割分担を整理し、強化一辺倒だったガバナンスや競争を再考する時期にきている。

 
  • 【消滅可能性と危機を煽るな】日本の人口減少って悪いこと?年金制度温存のために人に犠牲を強いるのはナンセンス 佐藤泰裕( 東京大学大学院経済学研究科教授)2024年6月10日 Wegde ONLINE
    • 日本全体が消滅可能性のある状態だと考えた方が妥当

    • 家計や企業の移動を引き起こし、狙った効果が発揮されない政策は地方自治体にまかせっきりにせずに、中央政府がイニシアティブをとり、政策協調を呼びかける必要がある。

    • 少子化対策を議論する上で、そもそも日本の人口が減ることの何が問題か、ということも議論が必要であろう。日本は狭い国土のわりに人口規模の大きな国である。

    • 人口減少が明らかに悪影響を及ぼす可能性はないであろうか。一つ大きな可能性として、制度と人口減少との不整合性が考えられる。さまざまな制度が人口増加を前提に作られており、人口減少に対応できていなければ、大きな問題を引き起こす。賦課方式の年金制度などが代表例である。

    • 「人口減少」という問題は地方ではなく、国の問題であり、その対策もその地域がどのような場所となるべきかによっても大きく変わる。 

       

  • 【誤解だらけの少子化問題】歯止めがかからない本当の理由は?データから見るその実態 坂元晴香( 東京女子医科大学衛生学公衆衛生学 准教授)2024年6月8日 Wedge ONLINE
    • 日本の少子化の最大の要因は「未婚化」にあります。

    • 結婚した夫婦が持つ子どもの数は減少傾向にはありますが、1970年代から2.0人前後でほぼ横ばいです。その一方で、未婚者の数は過去40年弱で大幅に増加しており、1980年から2020年で生涯未婚率(50歳時点での未婚割合)は女性で4.45%から17.81%に、男性ではなんと、2.6%から28.25%にまで増えています。

    • 「結婚の意思がある」と答えた割合は21年時点で男性81.4%、女性84.3%であり、1987年の調査から高い割合を維持し続けています。

    • 男性に関して、定職についている人ほど結婚率が高い傾向にあります。この傾向は年収においても同様にみられ、既婚男性の年収が最も高く、独身で交際相手がおらず、かつ異性との交際にも興味がない人が最も年収が低いことが分かっています。

    • 男性においては、過去の歴史から見ても高収入・高学歴であるほど、子どもを持っている。

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  • 少子化の危機をよく見よ! ~コロナ禍後に急加速~ 2024.06.06 第一生命経済研究所
    • ​​現在の「お金を配る少子化対策」で、すでに深刻なレベルに進んだ少子化に歯止めをかけられるのか、大いに疑問だ。特に、再び大きく減少した婚姻数の数字には驚かされた。今のままの少子化対策ではまずいと思う。

    • 最新の人口動態統計(概数)は、その数字が2023年の前年比▲6.0%(50.5万組→47.5万組)と再び減少加速となっていた。子供がより多く産まれることが望まれているときに、結婚の件数がこれだけ減っては、少子化が止まるはずなどない。親にお金を配るだけでは、十分とは言えない。

    • 全国から最も出生率の低い東京都に若者が集まるから、全国の少子化が進む。

    • 若者の非正規雇用比率を劇的に下げて、かつ、出会いの場を増やす必要性がある。企業内婚活促進、お見合いエージェントの普及など、もっとやればよいことが山ほどある。

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  • 合計特殊出生率1.20へ低下:関連法案可決も少子化対策の実効性にはなお疑問 2024/06/05 野村総合研究所
    • 合計特殊出生率1.20という衝撃的な数字が発表された同じ日に、少子化対策関連法案が参院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決された。

    • 同法では、児童手当の支給拡大が柱となる。支給対象を高校生年代まで延長し、所得制限を撤廃する。第3子以降の支給額は月3万円に倍増する。このほか、親の就労に関係なく子供を預けられる「こども誰でも通園制度」を2026年4月から全国で開始し、保育サービスも強化する。

    • 給付を増額するといった単純な経済的支援だけでは、深刻な少子化の問題は簡単に解決しない

    • 少子化の進展は、既に見たような婚姻率の低下によるところも大きい。既婚者への支援が中心であることも問題。

    • 少子化の進展は、日本経済の成長力を低下させ、国民の生活水準の改善を妨げる。また、年金・医療など社会保障制度の安定性・持続性も大きく揺るがしてしまう。この点から、少子化は、「静かなる有事」とも呼ばれている。

 
  • 「消滅可能性都市」の虚実 ~全国の問題を地方の問題と取り違えてはならない 2024.06.03 金融経済イニシアティブ
    • ​「消滅可能性都市」の議論はミスリーディングだ。2050年の姿は、人口減少の中途段階の一断面に過ぎない。日本の人口減少は、地方圏から始まり、大都市圏へと広がる。試算もさらに先へと延ばしていけば、いずれは全国のほとんどの自治体が消滅可能性都市になるはずだ。

    • 課題は、あくまで日本全体の人口減少をどう食い止めるかだ。

    • 外国からの人口流入は、いまや全国津々浦々に及び、国内労働市場に地殻変動をもたらしている。今後の日本経済は、外国からの人口移動を抜きに語ることはできない。

    • 究極的には、国内の出生率の低下を食いとどめることと、外国からの流入を着実に進めること、の2点に凝縮される。日本社会全体として、これらにどう取り組んでいくのか。地方圏、大都市圏といった切り口でない取り組みが求められる。

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  • 消滅可能性自治体の再検証:過去40年間のデータは何を語るのか? 2024年5月7日掲載 (独法)経済産業研究所
    • 1980年から2020年までの過去40年間の市区町村別の20-39歳女性人口の変化率を調べてみると、2020年10月1日時点で1,741ある自治体のうち、すでに879の自治体において20-39歳女性人口が半減していた
      • これは2014年の日本創成会議のレポートが指摘した、2010年から2040年の今後30年間で消滅可能性のある896の自治体とほぼ同数である。
    • 妊娠・出産から乳幼児の子育てが中心となる20-39歳の男女合計人口を見ると、過去40年間で約1,110万人がすでに減少している
    • 過去40年間で全国の20-39歳女性人口の減少が著しい状況でも124の自治体では20-39歳女性人口が増加していたことである。自然増ではなく社会増によるものだと推測できるが、その特徴を1つ挙げるなら、各都市圏のベッドタウンにおける20-39歳女性人口の増加である。
    • 人口減少対策として、本来は一国全体の出生率を改善させる少子化対策に取り組むべきところ、地方創生では地方自治体間で若年層や子育て人口の奪い合いにつながってしまったという批判もある。
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